ノーベル医学生理学賞受賞 首相はじめ日本中が喜びにわくなか、素直に喜べない理由 

農業情報研究所意見・論評・著書等紹介2016年10月4日

  テレビや新聞によると、大隅良典・東京工業大栄誉教授のノーベル医学生理学賞受賞の喜びで日本中が湧いているそうである。しかし、私はああそうですか程度、特段の(喜びの)感情がわかない。お前は日本人ではないのかと言われそうだが、それも仕方がない。

 どうしてこうも無感情なのか。その意義が到底理解できない昨年受賞のニュートリノ研究ほどではないとしても、受賞の対象となった研究が、少なくとも当面、自分の生活とはあまり関係なさそうだからだ。大隅氏自身、この研究が「役に立つのは十年後、百年後かもしれない」と言っているのだから無理もない(ノーベル賞・大隅氏 「科学が役に立つのは100年後かも」  東京新聞 16.10.4)。

 安倍首相は昨日夜、早速大隅氏に電話、「先生の研究の成果は、がんやパーキンソン病などの難病で苦しむ方々に光を与えた。日本人として本当に誇りに思います」と祝福したそうだ(首相、大隅氏を電話で祝福 「難病の人に光」 47ニュース 16.10.3 )。前日は京都市で開かれた科学技術関連の国際会議で講演、「科学と技術は、社会を前進させてくれる。高齢化や、生産性の伸び悩み、健康増進といったいろいろな課題に取り組む上で、もっと重要な役割を果たす」と述べた(「科学技術で長寿社会を」 首相、国際会議講演で強調:政治 東京新聞 16.10.3)。

 福島原発事故の年、今は治療法のない難病と宣告された私は十年、百年も待っていられない。光など全然見えない。「人類が直面する脅威の大部分は核戦争や破局的な気候変動やGMウィルスのような科学技術の進歩から来る」というスティーブン・ホーキング博士の言葉*を借りなくても、. 世界最初の被爆国であり、複数の原子炉が次々暴走するのを止められず・今なお増え続ける汚染水になすすべもない国の経験に学べば、「科学と技術は、社会を前進させてくれる」などとは絶対に言えないはずだ。科学技術が「経済成長」を促し・依って「社会を前進」させる(安倍首相は「経済成長」を「社会発展」と混同しているのである)と盲信する者だけが言える言葉だ。

 お前は日本人ではない、非国民だと言われても、ノーベル賞受賞を喜べない理由はそこにある。もちろん、これはノーベル賞受賞の研究は無意味だとか、それに恐怖を覚えるとかいうことでではない。ただ、素直に喜べない、科学技術盲信者に国の首長の座を与えてはならないというだけである。

 *When asked how the world will end, Hawking said that increasingly, most of the threats humanity faces come from progress in technology.The scientist, who turned 74 this month, said these include nuclear war, catastrophic global warming and genetically engineered viruses.AI trained to slay players in a computer game could one day lead to killer robots in the real world, warn experts,Daily Mail,4 October 2016)