農業情報研究所意見・論評・著書等紹介2014年12月28日

 経済効率のみ追う地方創生戦略 「ミニ東京」と「新たな周辺、端っこ」を生むだけ

 「政府は27日の臨時閣議で、地方の人口減少に歯止めをかける「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を決定した。東京一極集中の是正へ地方の若者雇用を30万人生み出すなどの目標を掲げた。将来の人口展望を示す「長期ビジョン」も同時に決め、人口減少で存立そのものが危ぶまれる地方都市の活性化へ国を挙げて取り組む」(地方創生へ東京一極集中是正 総合戦略を閣議決定 日本経済新聞 14.12.28)そうである。

 その方向性はいいが実効性が問題というのが大方のマスコミの論調だ。例えば、

 地方創生戦略―自治体の学び合いこそ(社説) 朝日新聞 14.12.28
 社説:地方創生戦略 国は支え役に徹せよ社説) 毎日新聞 14.12.28
 地方創生総合戦略  具体的な道筋が見えない社説) 徳島新聞 14.12.28

 そうした中、唯一愛媛新聞が、この戦略を根本的に批判する論陣を張った。議論の核心は次の点にある。

 「地方に「まち・ひと・しごと」を増やそう―。その掛け声に異論はない。しかし、目指すところが「経済成長のための人口維持」であってみれば、結局は非効率で規模の小さな地域は切り捨てられ、地方の中にまた「ミニ東京」と「新たな周辺、端っこ」を生むだけ。人が減っても所得が増えずとも、安心して心豊かに暮らせる街づくりとは対極の思想というほかない。  「地方創生」を、急に目玉政策に仕立て上げた狙いが、来春の統一地方選を見据え、安倍政権の成長戦略の恩恵が地方に波及していないとの批判をかわすことにあるのは明らか。だが、そもそも経済や効率一辺倒の成長戦略の理念そのものが、地方の魅力である多様性やスローライフとは相いれない。「成長」と切り離した視点から、独自性を丁寧に後押しする方向にかじを切り直してもらいたい」

 地方創生総合戦略 ミニ東京や「新たな端」生むな 愛媛新聞 14.12.28

 この批判は、効率化一辺倒の安部農政の批判としても通用する。今、地方移住を望む若者が増えているという。移住を阻む最大の要因が雇用の欠如とも言われている。だが、若者がなぜ地方移住を望むかといえば、まさに「地方の魅力である多様性やスローライフ」を求めるからだろう。創出される雇用が多様な生き方を否定し・排除するようものであるとすれば、進んで地方に移住する若者はいないだろう。ただただ忙しい田舎生活など誰が望むだろう。何よりも重要なのは、農業だ。効率のみを追い求めるのではない「多様な農業」こそが「地方の魅力である多様性やスローライフ」の源泉である。

 若者の農村回帰の動きが強まる中、フランスでは「多様な農業」の奨励が地方人口減少への最大の対策となった。農業専業では自立不能な若者の「兼業」農家としての自立(経営創設)までもが奨励された。

 フランスの多様な農業 日本の大規模能率的農業育成農政の反省の一助とするために,14.11.10
 フランスの農業経営構造規制 前日記事「農水省 米生産費減へ・・・」の補遺,14.11.19

 効率的大規模経営(担い手)の育成を最大目標とする安部政府農政においては、多様な小規模農業や兼業農業は排除の対象でしかない。 目下の破滅的な米価下落に対しても、米価下落の歯止め策は講じることなく、専ら「低コスト化による稲作農業の体質強化を支援する」のだという。

 「2014年産の米価下落の影響を受けた稲作農家が、15年産で低コスト生産に取り組めるよう、助成金を交付する。認定農業者や認定就農者、集落営農、農地中間管理機構(農地集積バンク)から農地を借り受けている農家、「人・農地プラン」で位置付けられた地域の中心となる経営体などを対象とする。 直播栽培や農機の共同利用の他、(1)新品種導入による作期の分散(2)疎植栽培(3)温湯種子消毒(4)土壌分析を踏まえた施肥――など、農水省が指定する低コスト化に向けた15程度の取り組みから二つを選んで実施した場合にも、1ヘクタール当たり3万円を助成する方針だ」そうである(米直播栽培 1ヘクタール7万5000円助成 価格下落に対応 政府、自民経済対策 日本農業新聞 14.12.19)。

 それでも米価の底なしの下落が続けば、「担い手」の存続さえ不可能になる。高コストの有機農業や環境保全農業や若者の兼業農家など問題外だ。地方は「新たな周辺、端っこ」に追い込まれ、さらにその中に「新たな周辺、端っこ」も生まれるだろう。何が地方創生だ。