農業情報研究所意見・論評・著書等紹介2017年6月20日

支持率暴落安倍首相が印象操作の記者会見 加計学園獣医学部新設では反省のかけらもなし

 安倍晋三首相が19日、とりわけ「加計学園」の獣医学部新設に対する内閣府・文科省の不正関与疑惑にまともに対応しなかった(できなかった)ことで招いた内閣支持率の暴落各社世論調査出そろう 内閣支持率は男女、年齢でどうして大きく異なるのだろう  時評日日、17.619)にあわてたか、急遽記者会見を開いた。

 「印象操作のような議論に対して、つい、強い口調で反論してしまう。そうした私の姿勢が、結果として、政策論争以外の話を盛り上げてしまった。深く反省しております。
 また、国家戦略特区をめぐる省庁間のやり取りについて、先週、文部科学省が徹底的な追加調査を行った結果、新しく見つかったものも含め、文書を公開しました。これを受け、内閣府の調査も行い、関係する文書等を明らかにしました。

 
 しかし、最初に調査した段階では、それらの存在を確認できなかった。二転三転した形となり、長い時間が掛かることとなりました。こうした対応が、国民の皆様の政府への不信を招いたことは、率直に認めなければなりません」としおらしい(怪文書ではありません。首相官邸ホームページ:
平成29年6月19日安倍内閣総理大臣記者会見からの引用です)。

 しかし、肝心の国家戦略特区を利用した獣医学部新設の緊要性や正当性については一歩も譲らない。それどころか、「岩盤規制の改革には抵抗勢力が必ず存在します。しかし、私は絶対に屈しません。既得権と手を結ぶことも決してありません。今後とも総理大臣である私が先頭に立ち、ドリルの刃(やいば)となって、あらゆる岩盤規制を打ち破っていく。その決意であります」と息巻くありさまです。

いわく、「獣医学部はこの50年以上新設が全く認められてきませんでした。しかし、今、鳥インフルエンザ、口蹄疫など、動物から動物、さらには動物から人にうつるかもしれない伝染病が大きな問題となっています。専門家の育成、公務員獣医師の確保は喫緊の課題であります。
 そうした時代のニーズに応える規制改革は、行政をゆがめるのではなく、ゆがんだ行政を正すものです。岩盤規制改革を全体としてスピード感をもって進めることは正に総理大臣としての私の意志であります」。

要するに、50年も獣医学新設を認めなかった「岩盤規制」のために「専門家の育成、公務員獣医師の確保」という家畜伝染病や人畜感染症が蔓延する時代の要請に応えられなくなっている、岩盤規制改革は急務だということです。

そこで、ここから首相ができなかったと悔やむ「政策論争」に取り掛かるとしましょう。

まずは、50年も獣医学新設を認めなかった「岩盤規制」とはいかなるものかということです。ご存知の方はそう多くないでしょう。北海道根室台地で40年以上にわたり酪農の現場の変遷を見続けてきた臨床獣医師・岡井 健氏によりますと、こういうことのようです(獣医師は偏在はしているが足りなくはない、研究分野こそ広げるべきである そりおかしいぜ 第三章 17.6.4)。

「獣医学部の開設に4条件が事前に提示され長年もわたって検討されてきた。候補として名乗り出ていた、加計学園と京都産業大学はどちらも、この4条件をクリアーしていなかった。これは大学の開設の直接責任者の、文部科学省の前川政務次官が述べています。
 いわゆる「石破の4条件」とは以下である。
 <獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討 1、現在の提案主体による既存獣医師養成でない構想が具体化し、 2、ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき具体的需要が明らかになり、かつ、 3、既存の大学・学部では対応困難な場合には、 4、近年の獣医師需要動向も考慮しつつ、
全国的見地から本年度内に 検討を行う。>
 早い話が既存の大学では取り組みことができなかったことをすることが条件になっている。
 獣医師不足や、地域性などどこにも記載されていない。ところが突如として、「地域性」という言葉が提案されて産業大学が撤退したという経過であった」といいます。

つまり、加計学園と京都産業大学も条件をクリアできないのでは時代の要請に応えられない、そこで特区を作って条件を緩和、おまけに新設を京産大ではなく加計学園に許すために「地域性」の条件を加えたというわけです。あまりに胡散臭い話です。

次いで、安倍首相が言う「専門家の育成、公務員獣医師の確保は喫緊の課題」についてはどうでしょうか。岡井氏によれば獣医師は偏在するだけで足りないわけではないということです。

「獣医師の国家試験に合格するのはこの50年ほど変わりない。ほぼ1000人ほどである。50年前には、小動物(愛玩動物・ペット)の診療に300人ほど、産業動物(家畜)の診療に300人ほど、そして行政と研究職に400人ほどが就職していた。ところが、畜産の衰退と規模拡大で、産業動物への就職者がかなり減ってしまう一方で、愛玩動物」が増え、「愛玩動物の診療獣医師が増えてた。佐々木倫子の、マンガ「動物のお医者さん」がベストセラーになり、獣医師希望者が増えて、入学試験の偏差値が高くなり女性が増えた。

相変わらず、1000名ほどの獣医師が新たに生まれている。つまり獣医師は不足はしていないが、偏在するようになった。大雑把な数字であるが、産業動物へは100名ほど、愛願動物には600名ほどが就職するようになった。産業動物の診療獣医師は、小動物の診療もするようになり、食いつないでいる」といいます。

ところが、数が足りないわけではないと言われると、今度は、「日本の獣医学部の質は落ちている」と言いはじめた(山本幸三地方創生担当相)。

しかし、岡井氏はこれについても、「根拠は不明瞭である。加計学園は1学年の定員が160名である。50年前に酪農学園に獣医学科が設けられたばかりの頃は、研究室が3つしかなかった。病理と解剖と微生物だったと思うが、教授は北大を定年退官された方と、追われた人だけであった。器具も資材も教室もない。数年は(ひょっとすれば15年ほど)募集定員に満たなかった。京都産業大学が獣医学科開設を諦めた一つに、教員スタッフが集められなかったことにある。加計学園は、教員スタッフをどのように集めるつもりなのだろう。

獣医師の質を上げるためには、恵まれた環境とは言えない8校の地方国立大学の獣医学科を、人的に物理的に(インフラなど)資金的に支援すれば事足りる。全国大学獣医学関係代表者協議会は、山本大臣に向けて意見書を提出した」と言います(獣医師は偏在はしているが足りなくはないし、質の評価を根拠なく言い出す滑稽さ そりゃおかしいぜ第三章 17.616)。

してみると、「専門家の育成、公務員獣医師の確保は喫緊の課題」などと言うのは、不要不急の加計学園獣医学部新設を緊急に必要と印象づける「印象操作」にすぎないように見えてきます。

「昨日文科省の再調査で発表した14の内部文書であるが、加計学園の客員教授で閑職時に面倒見てもらっていた萩生田光一内閣官房副長官が手書きで、加計学園へと大きくシフトを切らせた事実が判明した。獣医学科開設は4万人足らずの獣医師のどこが岩盤かもわからないまま、安倍晋三のお友達へ特段の配慮がなされたことだけが鮮明になったのである」(岡井氏、同上)。

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