農業情報研究所意見・論評・著書等紹介2015年9月16日

大水害 山野・河川の放射性物質はどこへ 汚染マップの早急な見直しが必要だ

 マスコミは連日、茨城・栃木・福島・宮城豪雨がもたらした水害等激甚な災害の様相を大々的に、事細かく報じている。被災地救援のため、それは必要な報道には違いない。しかし、今回の水害等大災害の被災地が福島第一原発原発事故の被災地と重なっていることは完全に忘れられているようだ。福島第一原発事故で放出され・広大な山野や河川・湖沼の底に沈着した放射性物質はこの災害でどこへ行くのか、行ったのかという筆者の目下の最大の関心事に触れる報道はほとんどない。わずかに、飯舘村の除染土などを入れた袋が仮置き場から川に流されたという報道があるだけだ(例えば飯舘、汚染土壌も流出 関東・東北水害、除染袋は393袋に 福島民友 15.9.16)。この報道のあり方に異を唱えているのは、私の知る限り、文芸評論家・斉藤美奈子氏だけだ(豪雨その後 本音のコラム 東京新聞 15.9.16 朝刊 29面)。マスコミの鈍感さ、危機意識の欠如は危機感を覚えるほどだ。

 *想像力 福島を大規模土砂災害が襲ったら・・・,14.8.29

 特に懸念されるのは、鬼怒川決壊で泥水に埋まった茨城県常総市平地部の新たな放射能汚染である。日光市、塩谷町、矢板市、鹿沼市など鬼怒川上流部やこれに注ぐ大谷川が流れる栃木県の山地(や川底)には多くの放射性物質が沈着している(いた)**。それが今でも無視でなきない量に上るであろうことは、これら市町のキノコや山菜の出荷制限が未だ続いていることからも推測できる***

 **文科省:放射線量分布マップ・土壌濃度マップ(201231日時点)
   http://ramap.jmc.or.jp/map/mapdf/pdf/soil/v02/cs134/5539-D.pdf

 ***栃木県:県産農林水産物等の出荷制限と解除の状況について

   http://www.pref.tochigi.lg.jp/kinkyu/y00/shukkahikae.html

 そういう放射性物質が流され、鬼怒川から利根川を経て銚子、太平洋にまで到達したであろう。それだけでなく、決壊で氾濫原となってしまった常総市の居住地や田畑に積り、沈着した恐れもある。今日の東京新聞の常総市ルポによると、「泥水が乾いた場所では、土ぼこりが舞う。・・・住民たちはほこりにまみれ、タンスやテーブルを外に運び出す」。だが、放射線被ばくの恐れなど、まったく頭に浮かばないようだ。(鬼怒川決壊常総市ルポ 渋滞 汚泥あえぐ街 東京新聞 15.9.16 朝刊 32面)。住民にはそんなことを考えている余裕はない。しかし、記者もまったく気づかないのだろうか。あるいはこれ、斉藤美奈子氏が言う報道管制なのか。

 常総市に限らない。多くの地域や水系で、特に氾濫地域では、放射性物質濃度マップの早急な見直しが必要だ。除染済み田畑も元の木阿弥になっている恐れがある。食用・飼料作物等の安全対策の見直しも必要になる。要するに、国民の命と健康を守ろうというなら、原発事故直後並みの放射能防護対策が必要ということだ。アンポ、アンポと騒いでいる場合ではない。