農業情報研究所意見・論評・著書等紹介2014126 

 「息をのむほど美しい棚田の風景」 「強い農業」では護れない

 国指定の名勝・輪島市の 白米(しろよね)千枚田を耕す地元農家が、今年とうとう1軒になるそうである。去年までは3軒の地元農家が米作りを続けてきたが、2軒が高齢を理由に耕作を断念した。千枚田の棚田1004枚中、現在耕作されているのは943枚。このうち約400枚を地元白米町の3農家がこれまで維持してきた。

 2軒の断念で作り手がいなくなる約200枚は、近在の農家でつくる耕作ボランティアグループ「白米千枚田愛耕会」が引き継ぐ。愛耕会は、今年からメンバー30人で全体の半分近くの約440枚を一手に担うことになる。白米の隣接町に住む定年を迎えた男性を新規会員として迎えたり、会員が個人で耕作する棚田を増やしたりするという。

 地元農家1軒に 輪島・千枚田
 北國新聞 14.1.18

 「日本は瑞穂の国です。息をのむほど美しい棚田の風景、伝統ある文化。若者たちが、こうした美しい故郷を守り、未来に「希望」が持てる「強い農業」を作ってまいります」。

 こう叫んだのはどこのどなたでしょう。この人が率いる政府は、TPPに対応すべく生産コストを4割引き下げるために(それでも関税が撤廃された外国の米に対抗すべくもありませんが)、新設の農地中間管理機構を通じて全農地の8割を「担い手」に集積し、その農地を「大区画化」する以外の政策をもち合わせないのです。

 農水省は、農地の大区画化などの基盤整備の農家負担を減らすため、担い手への集積率などに応じて支払う助成金を拡充することを決めたそうである

 基盤整備事業の受益面積20㌶以上(中山間地域10㌶)で大区画化や排水対策などに取り組む地域を対象に、これまで最大7.5%だった助成水準を引き上げ、一定の要件を満たせば最大125%を助成し、農家負担が実質ゼロになるようにする。助成額は、事業完了までの期間中に「人・農地プラン」で決めた担い手に農地を集めた割合を示す「中心経営体集積率」をどこまで高めるかで決まる。受益面積の集積率が85%以上なら、事業費の8.5%を助成する。さらに、担い手に集める農地の8割以上をひとまとめにする「面的集積」をしたら、集積率に応じて「集約化加算」を1~4%上乗せする。集積率85%以上なら合計12.5%の助成となり、農家負担は実質ゼロになるというのである。

 農地基盤整備 集積率に応じ助成 農家負担実質ゼロも 農水省 日本農業新聞 14.1.23

 お前が同意しないから助成率で割りを食うなどと、「減反」時代に似た村の不和を招きかねない。集団強制による不本意な農地差出しと大区画化(交換分合と畔を取り払い、土地を均平にする工事)への同意も方々で起きかねない。

 しかし、日本の農地の40%は「中山間地域」にある。そこにある水田は、多かれ少なかれ棚田である。現代の土木技術をもってすれば、写真のような棚田さえ、ある程度の「大区画化」は不可能なことではない。しかし、そんなことをして何の意味がある?「若者たちが、こうした美しい故郷を守り、未来に「希望」が持てる「強い農業」を作るためにとそれを断行するとき、「息をのむほど美しい棚田の風景、伝統ある文化」はどうなるのでしょうか。

 今なによりも必要なのは、大規模化、大区画化ではない、「白米千枚田愛耕会」に見られるような、また最近盛り上がりを見せる農村移住、就農のような草の根の農業・農地保全活動に最大限の援助を与えることではありませんか。