農業情報研究所意見・論評・著書等紹介2015年6月5

強制減反卒業の農水省 飼料用米「強制増反」へ 水田牧草地化や酒米奨励の方がずっとマシ

 農水省が飼料用米増産に躍起になっている。農水省の5月15日現在の調べでは、15年産飼料用米の生産量は35万トン、14年産に比べればほぼ倍増だが、主食用米の需給均衡、従って米価安定のためには一層の上積みが必要だ。JAグループが掲げる60万トンという目標にもほど遠い。

 そこで、6月末までに国に提出することになっている飼料用米生産者の予定生産量を記した「新規需要米取組計画書」の提出期限を1ヵ月延長、「JAグループと一体で産地への働き掛けを強化。まだ伸びしろがある産地を重点的に回り、知事らトップに上積みを直談判する。既に田植えを終えて計画書を仕上げた生産者も多いが、これを修正し、主食用米を減らして飼料用米の割合を増やす用途変更を促す」という。5月4日にそのための会合が開かれ、都道府県の担当課長ら約150人が出席したとのことである。

 飼料米35万トンに倍増 申請期限 上積みへ1カ月延長 5月15日現在 日本農業新聞 15.5.30 

 飼料米上積み必達を 需給安定に不可欠 都道府県担当課長会議 農水省 日本農業新聞 15.5.5

 菅官房長官ではないが、多くの生産者は家畜に食べさせるために米を作ることに”違和感”を感じている。飼料用米生産の意欲はなかなかわかない。政府は最大で生産費を100%償うほどの国の補助金を出し、飼料用米作りはお得ですと釣っている。しかし、それほどの補助なしでは輸入トウモロコシに太刀打ちできない飼料用米の生産には、そもそも持続性がない。生産者もそれを知っている。米価暴落を避けるための一時的避難ならともかく、本格的飼料用米生産は米生産が輸入トウモロコシ並みの競争力を獲得した暁にのみ取り組むべきものである。

 「強制減反」を卒業した後、さらに「選択的生産調整」も卒業しようと始めた飼料用米奨励だが、知事との「直談判」とか、主食用米として植えつけたものを飼料用米として出せとか、どうやら飼料用米「強制増反」の様相を呈してきた。しかし、「減反」同様、これも失敗に帰すだろう。生産調整協力者に「戸別所得補償」をする選択的生産調整を続けながらの現実的な生産コスト削減や、山地水田の牧草地化、酒米(酒造好適米)生産地化の方がよほど将来性がある。

 参考までに

 「日本酒の里」に新たな夢 中山間地の水田農業(万象点描) 日本農業新聞 15.6.5 第2面

 気仙沼甘一地区の「蔵の華」栽培田