農業情報研究所意見・論評・著書等紹介2016114:農政新時代 

「農政新時代」 農業ばかりか肥料産業もリストラ 増えるばかりの社会的損失

   自民党の小泉進次郎農林部会長が茨城県内のホームセンターやJAを訪れ、「肥料の種類は韓国の約100種類に対して日本は約1万6000種類に上ると指摘。『本当に1万6000種類が必要なのか、それだけ多くの肥料を作っている工場の稼働率はどうなのか、そういったことで考えると、構造問題を突いていかないと、農政新時代を切り開くことはできない』と述べた」そうである。

 「環太平洋連携協定(TPP)の国内対策」の一環をなす農業資材の価格低減に向け、「肥料の製造工場の集約化など構造改革」を進めねばならないということらしい。

 [徹底 TPP報道] 資材の構造改革必要 肥料工場 集約化を 自民・小泉氏茨城視察 日本農業新聞 16.1.14

 だが、そもそも日本の肥料工場は本当に1万6000種類もの肥料を作っているのだろうか。信じられない数字である。例えば大手肥料メーカーの住友化学―その一工場ではない―の肥料製品をみると、水稲肥料が54種、園芸用肥料が42種、芝用肥料が8種、その他肥料が3種、計107種である(https://www.i-nouryoku.com/prod/search/search_2_0.html)。1万6000という数字はどこから出てきたのだろうか。恐らくは、メーカーのよって名前が異なる同種製品を別種の肥料として合計したものだろう(そのこと自体は確認できないが)。1メーカーあるいは一工場が1万6000種類もの肥料を製造しており、そのために「工場の稼働率」が下がっているわけでは決してない。

 だとすれば、中小メーカーを大手に吸収する「構造改革」(リストラ)の断行により「工場の稼働率」が上がり、肥料価格が「低減」するわけではない。少数メーカーによる寡占、あるいは独占で、肥料価格は却って上がる恐れさえある。

 前にもにも述べたが、肥料価格が思うよう下がらないのは、肥料生産コストの6割以上を国際市況や為替に左右される原材料のコストが占めているからである(「農政新時代」の中身 農業生産資材・産品の流通・価格形成見直し 絵空事のほか何もない)。農水省の調査自体、原材料費削減の余地ありというメーカーは、中規模メーカーで8%、大規模メーカーでも17%にとどまり、小規模メーカーの方が33%と却って多くなっている(http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2013fy/E002752.pdf)。 

 農業と同様、リストラ=大規模化による生産コス低減に過大な期待をかけることはできない。経済的利益よりも失業という社会的損失の方が大きいのも農業と同様だ。「農政新時代」、農業者だけではなく、工業労働者にまで犠牲を強いるのだろうか。