熊本の鶏舎崩壊 災害列島 人工化された農業への自然からの警鐘

農業情報研究所意見・論評・著書等紹介2016年4月30日:5月1日追記

 今日の日本農業新聞によると、「熊本地震で熊本県の複数の鶏舎が崩壊するなどし、少なくとも採卵鶏計33万羽が処分されたことが分かった。餌や水を与えることができず飼養継続は難しいと、養鶏農家は苦渋の決断を迫られた」とのことである(鶏舎崩壊、33万羽処分 「営農再開 支援を」 地震で熊本県内 日本農業新聞 16.4.30)。

 ここ数年、似たような農業災害が頻々報じられるようになった。 

 熊本地震に際してはつい先日、「熊本県内で肉牛や養豚農家が持つ飼料の保管用タンクが大きく損壊している実態が明らかになってきた。「牛や豚の給餌に支障が出る」。農家の焦りは高まっている。被害は県広域で発生し、修理業者の確保も難しい状況。復旧には時間がかかる見通しで、地域農業への影響は長期化する恐れがある」と報じられたばかりだ(熊本地震 飼料タンク損壊 手作業で給餌 菊池市 日本農業新聞 16.4.22

 先月長野県で吹き荒れた強風では、ホウレンソウや花きなどの栽培用や水稲育苗用のパイプハウス計40棟で骨組みが変形するなど、計921万円余の被害が出た(強風、農業被害921万円 山ノ内・北小、屋根めくれる 信濃毎日新聞 16.4.19)。

 1月の寒波・大雪は、こんな寒波や大雪は経験したとのない群馬、栃木、茨城、和歌山県、九州などで施設損壊の甚大な被害をもたらした。例えばイチゴ、トマトなど施設園芸の規模拡大を進めてきた栃木県ではパイプハウスと鉄骨ハウスなどが1388ヵ所で損壊、うち1117ヵ所は全壊した雪の農業被害5億4300万円 19市町を県が支援へ(栃木) 東京新聞 16.2.8)。佐賀県では佐賀市や伊万里市などでイチゴやアスパラガスなどのビニールハウスが損壊、養鶏場では寒さをしのぐために重なり合ったブロイラー2762羽が圧死、鳥栖市神辺町ではアスパラガス用のビニールハウスが雪の重みでつぶされる被害が相次いだ(農業被害 ビニールハウス倒壊86棟、ブロイラー2762羽が圧死 断水、1万8141世帯に拡大 /佐賀 毎日新聞 16.1.29)。

 今年だけでもこんなありさまだ。 

 一昨年(2014年)冬、日本列島大平洋側を襲った記録的大雪は―「稲作偏重」からの脱却を阻んできた日本海側では当たり前の豪雪―そんな豪雪など経験したことがなかった施設型農畜産の先進地に大災害をもたらした。これも記憶に新しいことだ。

 これは、余りに「人工化」された近代的農業―(巨)大規模施設型農畜産(果樹、野菜、畜産)―に対する自然から警鐘ではないのか。これら部門は、もはや成長が見込めない稲作部門に代わって日本農業の成長をリードすべき成長部門と目されているものだ。農業所得倍増の勇ましい掛け声も、こうした成長部門なしでは生まれようがない。ところが、今や自然がそんな成長戦略に警鐘を鳴らしている。これは、まさに安部農政への警鐘ではないか。

 先日もTPPに強い農業は災害に弱い農業 フランスの教訓と書いた。今日の日本農業新聞のコラム・万象点描(4面)も、蔦谷栄一氏(農的社会デザイン研究所代表)が、公共事業により人工化(道路整備、発電所建設など)され、農地は荒れるにまかされた青島が豪雨により全滅の危機に曝されるという合唱構成劇・「遥かなる島」の例に引き、「『災害列島』の備え 共同軸に自給度高めよう」と呼びかけいる。

  5月1日追記 

 本日付日本農業新聞によると、「熊本地震の影響で、熊本県の養豚農家に大きな被害が出ていることが県養豚協会の調べで分かった。同会員94戸のうち、半数以上が飼料タンクの倒壊や給餌のパイプラインが破損するなど大きな被害を受けた」、協会会員の「セブンフーズ(株)も大きな被害を受けた。同社は菊池市などで、母豚2100頭を飼養し、年間5万頭を出荷する。今回の震災の被害額は1億円を超えると見積もる。七つの飼料タンクが倒れ、月900トンを製造する自家配合飼料工場も壊れた。飼料を豚舎まで運ぶラインは分断されていた。・・・豚の出荷を延ばすことはできない上、生産を落とせば、さらに経営に響く。ほとんどの職員が被災した中、タンクから手作業で飼料をかき出し、1日12トンの給餌に汗を流した」とのことである。

 熊本県 養豚農家の過半 被災 日本農業新聞 16.5.1

 予め工場で調合された配合飼料を、牛の大集団を狭い土地(フィードロット)に囲い込む柵に沿って巡らされたパイプラインに流して自動給餌する。配合飼料原料の主体をなすトウモロコシを安価に大量生産できるようになった戦後アメリカで1970年代に始まったこのような肉牛工場生産方式は養豚、養鶏にも拡張され、世界中に広まった。しかし、熊本地震は、地震列島ではこのような大規模工場畜産は、破滅的リスクを覚悟しなければ採用できないことを明らかにしたようだ。

 ただし被災地を訪問した安部首相、こんな工場畜産の惨状には目もくれなかったようだ。