TPP、農協改革「これだけの仕打ちを受けて」も自民42%、民進17% 参院選・日本農業新聞農政モニター調査

農業情報研究所意見・論評・著書等紹介農業・農村・食料 2016年6月21日

   参院選を前に、農地改革と高度成長がもたらした「貧農の消滅」・「農民運動の崩壊」・「農協の体制化」(持田恵三著 「近代日本の知識人と農民」 家の光、平成9年)により長年自民党(保守与党)の支持基盤をなしてきた農家の間に動揺が広がっている。政府・与党が農協潰し(「生かさず殺さず」ではない)や、日本農業の基盤(土台)を根底から覆しかねない環太平洋経済連携協定(TPP)の発効に向けてしゃむにに突進しているからだ。

 福島県を除く東北5県の農協政治連盟(農政連)は自主投票を決め た。同じく自主投票を決めたJAグループ佐賀の政治団体「佐賀県農政協議会」の合同支部長会議では、「これだけの仕打ちを受けてまだ自民を推薦するのか」との意見も出たという。

 安倍暴政に農家もついに目覚めたかと思いきや、今朝の日本農業新聞は1面で、「比例 自民41、民進17%」という同紙モニター調査の結果を報じている。選挙区の投票先も自民42%、民進20%、共産6%と同様の傾向だ。安倍農政に不満が66%を占めるにもかかわらず、野党は批判票の受け皿になり切れていないという。

 [2016年 参院選] 比例 自民41、民進17% 安倍農政に不満66% 本紙モニター調査 日本農業新聞 16.6.21

 無理もない。最大野党の民進党は、原則的にはTPPには前向きだ。「情報が開示されないと判断できない部分が残る。今のままでは反対だ」 と言うにとどまり、街頭演説でもTPPにはほとんど触れない。1人区での野党共闘の合意にもかかわらず、民進党(連合)の共産アレルギーでTPP反対の共産党も野党候補を「推薦」できない県がある。気の短い農家、民進党の下で安楽死するより、いっそのこと殺せと開き直るほかないではないか。

 しかし、農業県1人区の勝敗の行方は農家の将来にかかわるだけではない。与党圧勝となれば、9条改憲、沖縄県民・地方住民の圧殺、原発地震列島が待っている。国民はいっそのこと殺せと開き直るわけにはいかないのだ。

 参考情報

 沖縄県民大会 玉城愛さんスピーチ全文 本土も「第二の加害者」 東京新聞 16.6.21 朝刊

 <奔流乱流1強政治>政権打倒で一点突破 河北新報 16.6.21

 <参院選山形>共産、舟山氏の推薦断念 河北新報 16.6.21

  <参院選山形>埋まらなかった深い溝 河北新報 16.6.21 

 <参院選夏臨戦>福島/2現職1枠巡り激突 河北新報 16.6.21

   <参院選東北>共産批判は行き過ぎ 村井知事 河北新報 16.6.21

 養豚農家にTPPの影響は?「農業、多角的に理解して」(群馬) 東京新聞 16.6.21

  佐賀県内農畜産物275億円減 生産額4分の3に 佐賀新聞 16.6.21

    佐賀市で開いた会見では農協幹部が「農業を大企業の成長の犠牲にして安倍首相の言う『美しい国』を守れるのか」と語気を強め・・・

 【緊急対談:どうする農協改革(上)】危機感持ち真の改革を 緊急対談:どうする農協改革(下) 農業協同組合新聞 16.6.17

  何回も何回も、だまされて、だまされて、ついに、「生かさず殺さず」どころか、息の根を止められかねないほどに地域もJA組織も追い込まれている。

 2016参院選/上 TPPに攻守揺れ 大規模化でコスト増も /青森 毎日新聞 16.6.15

 農業票、TPPが影 東北5県農政連は自主投票 日本経済新聞 16.6.15

 佐賀県農政協は自主投票 佐賀新聞 16.6.14

 県農政連参院選対応 各農協に判断委ねる 東奥日報 16.6.7

 <参院選山形>単位農協 大半が中立か 河北新報 16.6.7

 <参院選争点を歩く>農業どこへ 募る不安 河北新報 16.6.6

   夏の参院選、県農政連は自主投票 2氏の推薦願、意見まとまらず 山形新聞 16.5.31

 県農政連、自主投票か・参院選県区 きょう30日に対応決定 山形新聞 16.5.30

 青森・毎日(16.6.15)

 深緑の季節を迎えた八甲田山系。その豊かな雪解け水に恵まれた青森市八ツ役の水田で、「山田ふぁーむ」の山田正樹代表(53)はあきたこまちやコシヒカリを育てている。「TPPを恐れていない。むしろプラス効果に期待したい」

 政府が昨年10月に合意したTPP、つまり「環太平洋パートナーシップ協定」は日本にとって「黒船」にほかならない。安い輸入農産品の襲来が農家の経営を直撃するからだ。一方で政府は、TPPをテコに農業の競争力・体力強化を図る。農地集約や新規参入を進め、新たな担い手を育てたい思惑もある。

 青森市生まれの山田さんは早稲田大卒業後、外資系商社に入社。やがて「Uターン」し、広告会社勤務などを経て農家になった。収量を求めず質を追求し、農協などを通さない直接販売を展開。「米・食味鑑定士協会」の品評会に毎年出品し、「おいしさの数値化」を図る。2013年にはコシヒカリが約4000点の中から特別優秀賞に輝いた。その「エビデンス(証拠)のあるおいしさ」で販路を開拓。価格競争から離れ、「TPPを脅威に感じないやり方をしている」という。

 夢は「うまいコメを世界に売ること」。海外の日本食ブームもあり、チャンスはある。だが個人では海外へ打って出る経営戦略は立てにくいため、商社などとの連携に期待を寄せる。

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 一方、県内の多くの農家からはTPPに不安の声が聞かれるのも事実だ。つがる市の70代の男性は「米価を安定させるため、生産調整に応じて交付金をもらい、収入を安定させる方法が当たり前になっているのが現状。農家は既に『守り』に入っているよ」と話す。

 とはいえ、青森の農業は近年「攻めの姿勢」も目立つ。リンゴは輸出拡大を続け、県産米の新品種「青天の霹靂(へきれき)」は日本穀物検定協会の15年産米の食味ランキングで最高評価「特A」に輝いた。だがTPPの影響は避けられそうにない。国は昨年、県内の農林水産生産額については今後、30億〜50億円減との試算を公表した。コメは「影響ゼロ」としたが、県独自の試算では23億円の減少が予想される。

 農水省によると、15年の県内の農業経営体数は約3万5000。10年と比べて約9000減ったが、耕地面積では10ヘクタール、販売金額では700万円を境にそれ以上の経営体が増え、それ以下が減っている。JA青森中央会によると、後継者不足の問題などで廃業した農家の土地を近隣の農家が借り受けることで、経営の「大規模化」が進んでおり、ここ5〜6年はその傾向が顕著という。政府・自民党が推進する大規模化の波は、確かに青森にも及んでいる。だが「経費を差し引いた所得の伸びはあまりないのが現状」(同中央会)との指摘もある。労働力不足も深刻化し、従来は家族の手伝いでカバーできた作業にもわざわざ人件費をかけて人を雇用するなど、規模拡大の影響でコスト増となるケースもあるという。

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 長年、自民党の支持基盤だった農家。だがTPP導入を巡り、近年の国政選挙では自民候補を積極的には支援しない現象も各地で起きている。県内でも7月10日投開票の参院選への対応について、JAグループ幹部で構成する県農協農政対策委員会が「自主投票」を決めた。

 競争力を強化させ、「大規模化」「法人化」を進めたい政府・自民党。青森選挙区では自民現職の山崎力氏(69)が「生産者への支援対策と海外の市場開拓が重要」と訴える。一方で「今回のTPP合意に反対」の立場を取る民進党は、民主党政権下で農水政務官も務めた田名部匡代氏(46)が「県の基幹産業は1次産業だが、農村や漁村には不安が広がっている」と警戒感を強める。参院選を前に、岐路に立つ県内の農業の現状を探った。【佐藤裕太】