飼料用米の主食用米としての販売が発覚 飼料用米誘導策の根本的見直しが必要 

農業情報研究所意見・論評・著書等紹介農業・農村・食料 2016年6月24日

 青森県の町議が飼料用米を主食用米として販売していたことが発覚した中泊の町議が飼料用米を主食用で販売 東奥日報 16.6.24)。県内初めての不正事件というが、起こるべくして起きた事件、氷山の一角が見えたけかもしれない。

 安倍政府は2013年、コメの生産調整(減反)は「農業の担い手の自由な経営判断を著しく阻害している」という産業競争力会議の提言を受け、5年後をメドとする生産調整(国による生産数量目標の配分 )の廃止、生産調整協力農家への直接支払(コメ作付面積10アール当たり1万5000円のコメの戸別所得補償)の14年産からの半減と17年産を以ての廃止を決めた。

 しかし、これは米価下落と補助金喪失のダブルパンチを受ける「担い手」と目される大規模農家のダウン、水田農業の壊滅にもつながりかねない。 そこで農水省、手厚い助成によって主食用米から飼料用米への作付け転換を誘導、水田農業の維持を図る策を編み出した。

 飼料用米は主食用米の10分の1ほどの価格(主食用のトン25万円ほどに対して2万―2万5000円ほど)で売らなければ、配合飼料の主要原料をなしている米国産輸入トウモロコシと競争できない。しかし、それでは農業経営が成り立たない。この差額を埋め合わせるために、収量に応じて変わる10アール当たり 5・5万円から10・5万円の助成金が支払われることになった。

 しかし、飼料用米といえども米は米である。嗜好性によっては主食用米としても十分通用するだろう。少量を主食用米に混ぜても、誰も気付かない。こうして飼料用米を主食用米として販売すれば、両者の価格差に相当する巨大な不正利得が得られることになる。

 不正流通への巨大な誘因が存在するのである。不正を防ぐためには、播種・収穫・乾燥・貯蔵・輸送・飼料工場や畜産施設での加工・保管・給餌の全過程―主食用米の圃場から食卓までの全過程で主食用米と飼料用米が隔離されねばならない。これは気の遠くなるような難題、一物一価の経済法則を無視した飼料用米誘導策の基本的難題である。

 巨大な経済的誘因があるかぎり、主食用米への飼料用米の混入(故意の)を防ぐのは容易なことではない。不正流通を完全になくすための行政コストはいかほどのものだろう。不正発覚は飼料用米政策、生産調整・戸別所得補償廃止の根本的見直しを迫っている。