飼料用米<農業情報研究所意見・論評・著書等紹介農業・農村・食料 2016年11月11日

飼料用米補助金でボロ儲け?一物二価を生み出す飼料用米転換誘導策の陥穽

 青森県十和田市で食肉用牛を飼う男性、2013年ごろ、飼料用米で飼育する牛が栄養(カロリー)不足で生育不良となり、経営が著しく悪化した。栄養不足が起きたのは、県内のさる農事組合法人から購入した飼料用米に他の農場で収穫されたくず米が混ぜられていたからと推察される。

 男性は15年、再び同じ法人と飼料用米の購入契約を締結、サンプル調査をした結果、比較的状態の良いコメが34%、生育不良のコメが29%、完全なくず米などが37%含まれていた。

 そこで男性、この法人に対して慰謝料など約330万円の損害賠償を求める訴えを青森地裁に起こした。「法人は飼料用米に関する国の補助金を不正に受給するため、他の水田で収穫したコメから優良なコメを選別して主食用に回し、残った大量のくず米を飼料用米に混ぜて供給していた」と主張している。

 飼料米にくず米混入で牛生育不良 組合法人を提訴 河北新報 16.11.11

 真偽のほどは未だ分らない。しかし、これは当然起こり得る疑惑だ。

 私は14年に書いた安倍政権の農政改革に関する論考(第二次安倍政権の農政改革を問う米政策見直し・構造改革と農業・農村・農民 『世界』 20144月号)で、「飼料用米価格は主食用米に比べて格段に安いから、主食用米とは別物として扱あわねばならない。しかし、飼料用米といえども米は米、嗜好性によっては食用米としても十分通用する」(主食用米に故意に飼料用米を混ぜても、発覚するとは限らない)のだから、「生産調整見直し」で起きるだろう過剰作付→米価暴落を防ぐために考案された主食用米から飼料用米への転換の誘導という姑息な方策は「一物一価」という経済の大原則に反すると指摘した。

 これは、「(飼料用米の)播種・収穫・乾燥・貯蔵・輸送・飼料工場や畜産施設での加工・保管・給餌の全過程が、主食用米の圃場から食卓までの全過程と隔離されねばならない」ことを意味する。しかし、「限定された地域における小規模の実験事業としてはともかく、全国的に大量の飼料米を生産・流通させる方策」においては、そんことは不可能だ(荏開津典生 農政の論理をただす 農林統計協 156頁)。だから、奨励金を払って飼料用米への転換を促すなど、そもそもあり得ない施策なのだ。

 今、飼料用米への誘導政策は主食用米と飼料用米の価格差を補填するための巨額の財政負担のために持続性が疑われている。しかし、それは、そもそも原理的に成り立たない政策なのだ。

 青森の疑惑事件は、改めてそのことを思い知らせる。私は前記論考で、「農民が『幾多の困苦に堪えつつ』(農業基本法 昭和三六年 前文)水を引き、田を開き、何百年にもわたって米作りを継承してきたのは、自分と家族が食べ、人さまを養うためであった・・・。牧草を作り、家畜を放てというならまだしも、家畜に食べさせる米を作れとは!農民的農業は金儲けだけが目的ではない」と書いた。米余りの中での水田有効利用政策として飼料作物作付けや水田放牧はあり得るが、飼料用米への転作は最悪の選択である。