飼料用米<農業情報研究所意見・論評・著書等紹介農業・農村・食料 2016年12月7日

飼料用米補助金不正受給 青森農家1600万円 主食用米→飼料用米転換誘導策の避けがたい帰結

 先月このHPで、飼料用米補助金の不正受給に関する次のような話を伝えた。

 「青森県十和田市で食肉用牛を飼う男性、2013年ごろ、飼料用米で飼育する牛が栄養(カロリー)不足で生育不良となり、経営が著しく悪化した。栄養不足が起きたのは、県内のさる農事組合法人から購入した飼料用米に他の農場で収穫されたくず米が混ぜられていたからと推察される。

 男性は15年、再び同じ法人と飼料用米の購入契約を締結、サンプル調査をした結果、比較的状態の良いコメが34%、生育不良のコメが29%、完全なくず米などが37%含まれていた。

 そこで男性、この法人に対して慰謝料など約330万円の損害賠償を求める訴えを青森地裁に起こした。『法人は飼料用米に関する国の補助金を不正に受給するため、他の水田で収穫したコメから優良なコメを選別して主食用に回し、残った大量のくず米を飼料用米に混ぜて供給していた』と主張している」。

 飼料用米補助金でボロ儲け?一物二価を生み出す飼料用米転換誘導策の陥穽,11.11.11

 このとき、「真偽のほどは未だ分らない」が当然起こり得る話と言うにとどめておいた。

 ところが12月6日、農水省東北農政局が平成28323日から平成28920日の間に実施した立入検査により、「農事組合法人青森マエダライスが、自ら生産した平成27年産飼料用米に、他者から購入した主食用米玄米のふるい下米を混ぜ、飼料用米の数量を水増しして、当該飼料用米114トンについて農産物検査を受検の上、畜産農家に引き渡していたことを確認しました」と発表した。この不正行為で受け取った交付金(補助金)約1600万円の全額を返還するように命じたという。

 飼料用米の不適正な流通に対する措置等について 東北農政局 16.12.6

 <飼料米水増し>農政局が交付金返還命令 河北新報 16.12.7

 ここに言う「ふるい下米」とはふるい(1.7-2ミリメートル)の下に落ちた米で、一般主食用米より安価な業務(外食等)用主食用米、加工食品用(味噌用、米菓用、ビール用など)として利用される、通称「くず米」のことである。それを補助金によって一般主食用米と事実上同じ価格が保証される飼料用米として売ったわけだ。多少小粒でもちょっと見では飼料用米と見分けがつかない。恐れていたことが実際に起きたのである。

 今回の不正について農水省は「『非常に遺憾。再発防止徹底していく』と強調。農産物検査の際に不正がないかどうかの確認など、対策を強化する方針だ」という(飼料用米交付金 青森で不正受給 法人に返還命令 日本農業新聞 16.12.7 3面)。

 しかし、今回不正が発覚した飼料用米も「農産物検査を受検の上、畜産農家に引き渡していた」というのだから、通常の検査(飼料用もみ及び飼料用玄米の検査につい)で主食用米くず米の混入を見分けられるのかどうか、はなはだ疑問である。

 実際、今回の不正行為の摘発には、恐らくは十和田市の肉牛農家の通報を契機に始まった半年もかけた立入検査が必要だった。全国津々浦々 、何時どこで起きる分らない不正行為の摘発には膨大な監視網と行政コストが必要になる。「再発防止徹底」は非現実的だ。「再発防止徹底」を言うなら、大量の補助金を使った主食用米から飼料用米への転換誘導策をやめるしかない。現政権下ではそれも非現実的だが。