小泉農政改革の真髄は「経営感覚」育成? 「経験とカン」抜きで気まぐれ自然にどう対処 

農業情報研究所意見・論評・著書等紹介農業・農村・食料関係 2017212日 

 今日の日本経済新聞、編集委員・志田富雄氏が、小泉進次郎・自民党農林部会長の農政改革の真意は、農家は「経営感覚」を持て、「長年の経験とカンが頼り」から脱却せよということだと、したり顔に説いている。「農業改革が自由な競争環境を整備しても、農家や農協の意識が変わらなければ競争力は増しません」ということだ。

 農家に経営感覚を 小泉農政改革の真意 日本経済新聞 17.2.12

 「篤農家」なら、だから素人は困ると言うだろう。自然が相手の農業においては、最終的には「長年の経験とカン」がものを言う。例えば昭和55年、東北地方を襲った激甚な冷害の被害を多少なりとも軽減したのは、「雨の降る晩は(畦畔が破れないかと)二度起きてみることもしばしば・・・」、「深水20センチの確認のために夜3時田んぼを回ったこともあった」、「私は去る昭和25年から自分の水田で農業気象(最高最低気温、日照、雨量、流水温、風向)を毎日、日課として観測している。・・・8月23日からは畦畔板の使用やドロ上げをして9月23日まで20センチ以上の深水灌漑をした」篤農家たちの「長年の経験とカン」と多労を厭わぬ愛農精神であった。

 このような経験とカンと愛農精神のない「経営感覚」と「競争力」だけの農業は、必ずどこかでつまずき、破綻するでしょう。「学者・研究者や官僚の指導が強化されてきた」結果、「いつの間にか『篤農家』なる言葉が忘れ去られようとしている」。農業者の主体性なり自立性を尊重し、これを育てていく思いが完全に欠している競争力強化支援法案や今行われている一連の施策、それは「篤農家」精神を忘れさせる「戦後農政の総仕上げともいえる」。 「これに関連して、最近、担い手を雇用で確保するための法人化はやっぱり駄目だとする話を現場でたびたび耳にする。タイムカードで管理され、時間給で満足するような者に農業経営はできない」**。 

 わが国を襲う気象災害を中心とする農業災害は、今後ますます激甚化するであろう。「経営感覚」だけの農家では決して乗り切れないだろう。経験とカンに基づいて行動する「主体性と自立性」を持った農業者がますます必要になる。

 *「私の冷害克服作戦―篤農家の体験」 『青森農業』 1980年12月号 拙稿「五五年冷害から農業を考える レファレンス 1981年4月号から引用

 **蔦谷栄一 忘れられた「篤農家」精神 担い手の主体性こそ第一 万象点描 日本農業新聞 2017年2月10日 2面

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