農業情報研究所意見・論評・著書等紹介農業・農村・食料関係 2017519

 

「ロボットAI農業の凄い未来」?「兼業」こそが未来を切り開く 

 

「高齢農家が大量にやめていくことはいいことだと思っています。いままでの日本の農家はほとんどが零細で兼業、つまり農業では食べていないわけです。印象的だったのは、米価が下がると、農協が引き連れて全国から農家が集まってくる。彼らが鉢巻きをして本気で叫んでいるかというと、そうじゃないんです。顔を見れば、わかります。

 米価が高くなることが、本当に彼らの生き死に関わっているかと言えば、そんなことはないんです。農業で食べていないからです。

 日本農業新聞に8年間勤めていてよくわかったのですが、そういう農家の方たちが辞めていくことで、農地を集約する素地ができる。そして、農家の数を地盤にしていた勢力があって、そこが力を失っていく。それはいいことです」。

「エアコンのきいた部屋で、圃場を走る農業ロボットを操作する――。農業関係者のなかには、こんな農作業を絵空事と思う人がいるかもしれない。だが、窪田氏によると、技術的にはもう多くのことが可能になっているという。必要なのは、新しいテクノロジーを使いこなす経営と、イノベーションの実用化を阻む制度の壁を洗い出すことだろう」(吉田)。

日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』(講談社+α新書)を書いた窪田新之助氏(元日本農業新聞記者)と日本経済新聞社編集委員. 吉田 忠則氏.の言です。

 

ロボットとAIがひらく農業の未来 ジャーナリスト・窪田新之助氏に聞く(吉田忠則) 日経ビジネス 17.5.19

  

まことに農業と農村の現場を知らない者が考える絵空事でしょう。ロボットとAIのお手伝いはダメというつもりはありません。が、農業は将棋や囲碁とは違います。刻一刻変わる自然条件の中で育つ作物の管理をロボットとAIに任せれば、収獲皆無のリスクも覚悟せねばなりません。作物だけではない。崩れた畦畔や水路やため池など復旧もロボットとAIにお任せでしょうか。冗談を。

「いままでの日本の農家はほとんどが零細で兼業、つまり農業では食べていない」と言いますが、零細農家も兼業があるからこそ、(米価が下がっても)農業を続けられるのです。無理やり進める農地集約は農村社会を崩壊させ、それで出来上がる大規模専業農家は、米価が下がればひとたまりもなくつぶれます。

 

次をお読みください。

 

「安倍政権の『攻めの農業』が念頭に置くのは大規模経営のプロ農家。201511月の国会で、兼業農家や小規模農家の保護について問われた安倍首相は『小規模ではコストが高くなるのは当然だ。基本的には大規模化を進める』とはっきり答弁している。

 だが、日本の農家の大半は兼業農家だ。・・・『兼業農家』をつぶすと集落から人がいなくなる」と心配するのは・・・福岡県福智町の立花智幸さん(61)。

親子二代の兼業農家で、かつて炭鉱でさかえた立花さんの集落の農家も71軒のうち専業は6軒のみという。昨年市役所を定年退職したが、現在も再任用されて働く傍ら、アイガモ農法や無農薬栽培に取り組む。

『農業だけで食べるのは厳しく、経済だけ考えたら他の仕事の方がよっぽどいい』というが、農業の魅力は別にあるという。『除草剤の代わりにカモを放ち、米作りの楽しさに気付いた。自分が食べて、地域でまかなえる分を作るのが小農。食べ物の安全も確保できる』。日本の中山間地では農地の大規模化はそもそも困難といい『用水路やため池を共同で管理しているのも兼業を含めた集落の農家。兼業をつぶさず、集落に人がいる状況を続けることは、水や環境を守ることにもつながる』と話した。

    

挑む「小農学会」農業の未来「兼業」が開く(特報) 東京新聞 17.4.25 朝刊

    

日々「エアコンのきいた部屋で、圃場を走る農業ロボットを操作する」だけの大規模専業農業にどんな「魅力」があるのでしょう、人の生き方としても兼業農業の方がよっぽどましだ、と思いませんか。

  関連記事

スマホで水管理 雨にも寒さの夏にも日照りにも負けない稲作 ずくなし農家にできるものか 農業情報研究所 17.年5月4日

小泉農政改革の真髄は「経営感覚」育成? 「経験とカン」抜きで気まぐれ自然にどう対処 農業情報研究所 17212

【提言】地域存続の核として  山下惣一 農業協同組合新聞 17年1月4日

第二次安倍政権の農政改革を問う―米政策見直し・構造改革と農業・農村・農民(北林寿信) 世界(岩波書店) 2014年4月号 188-197頁