農業情報研究所意見・論評・著書等紹介農業・農村・食料関係 2018年8月11日

守りなき「攻めの農業」=輸出促進による農業成長戦略は完全に失敗

 マスコミが今年(2018年)前半の日本の農林水産物の輸出額が、前年同期比15.2%増の4359億円になった、19年に通年で1兆円を目指す政府目標の実現へ大きく前進した、などと騒いでいる。

農林水産物:「日本の食品」輸出額最高 上半期、15%増の4358億円 政府目標、通年1兆円近づく 毎日新聞 18.8.10

しかし、不思議なことに、同期、農林水産物の輸入額も前年同期比4.7%増の45500億円、史上最高レベルに達したことには一言も触れない。農産物に限っても、輸出は前年同期比15.1%増の2628憶円と史上最高になったが、輸入もまた31500億円に達した。この間、農産物輸出額は345億円増えたが、農産物輸入額は1572憶円増えた計算だ。国内農家の海外・国内市場は1227億円縮小した。

2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 18年1-6月
輸出 農林水産物計 6117 7452 7502 8073 8718 4359
農産物計 3570 4432 4595 4968 5256 2628
輸入 農林水産物計 92347 95186 85440 93692 95292 47646
農産物計 61346 65607 58265 64245 66148 33074

輸出の史上最高の伸びが一部農業地域・農家の所得増加(成長)に寄与しているのは間違いないが、大部分の地域・農家は輸入増加で痛めつけられているということだ。輸出促進による農業成長戦略は、輸入農産物の流入から国内農家を保護する国境保護政策の欠落・後退(自由主義貿易政策)により意味をなくしている。安倍政権の輸出促進政策は、農業成長(所得倍増)戦略としては完全に失敗している。

マスコミが輸出の増加ばかり強調するのは、それを隠すためなのであろうか。輸出が政府目標に達したとしても、事の本質は何も変わらない。

  関連情報

  18年上半期農産物輸出 4359億円、最高更新 牛肉や茶 主要品伸び鈍化 日本農業新聞 18.8.11