農業情報研究所意見・論評・著書等紹介農業・農村・食料関係20191120 

FTA、EPA対策としての「強い農業」づくり支援は与党の選挙対策費

 今日の東京新聞が「環太平洋連携協定(TPP)がまとまった二〇一五年度以降、農林水産省が毎年度計上している、海外農産品との競争にさらされる国内農業の強化を名目にした対策費が、農産品への影響試算額を上回り続けていることが分かった。農水省は「対策費は影響額と関係なく、強い農業を実現するためのもの」と説明。だが、「強い農業」には定義がないため、予算計上は歯止めがきかなくなっており、専門家から批判が出ている」と報じている。

 TPP 「強い農業」見えぬ具体像 対策費計上 歯止めなく 東京新聞 19.11.26 

 「強い農業」の確たる「定義」がないというのはその通り、災害に強い農業の意味も含まれようが、大部分の援助は国境保護を失っても海外農産品と競走できる低コスト農業の構築に向けられれている(強い農業づくりの支援 農林水産省)。しかし、土地を主たる生産要素とする農業の価格競争力(比較生産費)は圧倒的に天賦の土地資源の多寡に依存し・資本や労働が関与する余地は極めて小さい。世界の最も競争力の強い国との競争力の差は、経営規模拡大や生産資材コストの削減では埋まらない。

 下に掲げた米・豪との生産者価格比較図(米ドル/トン、データ出所:FAO)を見て、日本農業の競争力が米・豪に追いつく日が来ると想像できる人がいるだろうか(注)。予算計上が歯止めがきかなくなっているのは強い農業の定義がないためというより、海外農産品との競争力の格差はどれほどカネを注ぎ込んでも埋まらないからだ。

 無駄な「対策費」が増え続けるのは、それが与党の「選挙対策費」に他ならないからだ(「額ありき」農業対策費 「強化」掲げ、ばらまき 東京新聞 19.11.26

 (注)ただし、オーストラリアのコメは、「土地」ではなく「水」の不足で輸出余力を失いつつある。畜産品についても、気候変動が進むとともにそういうことが起きる可能性はある。

  オーストラリア主要米作地帯 水不足でトウモロコシに転換の動き 農業情報研究所19.3.19

  オーストラリア米生産 水不足と水価格値上がりで風前の灯  日本への輸出余力は 農業情報研究所 8.12.2

  No water, no work: 100 more jobs to go at SunRice,ABC Rural,19.11.26