農業情報研究所意見・論評・著書等紹介農業・農村・食料関係201912月1日

温暖化で国内シェア大幅上昇の北海道農業を日米貿易協定が襲う

 「国内の農業生産に占める北海道シェアがこの40年間で大幅に上昇している。都府県では重量野菜と呼ばれるジャガイモやダイコンなどが、農家の担い手不足や温暖化の影響で作付けが縮小し、生乳も猛暑の影響などで生産力が低下。近年は生乳生産量のうち道内が50%を超える状況が続くなど北海道への依存度が年々高まっている。」

 「道内シェアが拡大している大きな要因は、本州の農村地帯の高齢化が著しく、関東などで収穫作業の負担が大きい重量野菜の作付けが減少しているためだ。作付面積が広い道内では機械化が進み、温暖化で栽培適地も北上している。ブロッコリーは需要拡大に伴い国内全体の生産が増えているが、農地が広くて生産力のある道内の伸びが大きく、割合も年々増している。

 生乳は道内の生産量が都府県を上回った10年以降、道内の割合が50%を超えている。都府県の酪農家の減少が主な理由で、温暖化による猛暑のため、暑さに弱い乳牛1頭あたりの搾乳量が減っていることも影響しているようだ。」

 「東大大学院の鈴木宣弘教授は「産地の一極集中は自然災害によるリスクが高い」と懸念する。・・・食料自給率を維持するには道産の農産物を守っていく視点が欠かせない。鈴木教授は「本州への安定的な輸送手段をどう確保するかや、高騰する輸送コストを誰が負担するかが重要な論点となる」と指摘する。」

 今日の北海道新聞がそう伝えている(農業生産、北海道シェア大幅上昇 災害リスク懸念 輸送確保に課題 北海道新聞 19.12.1)。

 鈴木教授の指摘に異論があるわけではない。ただ、「道産の農産物を守っていく」ためには、日米貿易協定により強まる米国の攻撃から北海道農業をいかに守るかも「重要な論点となる」ということを付け加えておきたい(鈴木教授には言わずもがなの自明のことと思うけれども)。

 道は最近、日米貿易協定発効により、道内農畜産物の生産額が最大371億円減少するとの試算をまとめた。

「道内の農畜産物で、生産額が最も減るのが牛乳乳製品で149億~223億円。プロセスチーズの原料となるチェダーやゴーダなどハード系チーズの関税が最終的に撤廃されるほか、ヨーグルトや乳飲料用の脱脂粉乳と競合するホエーの関税も最終的に撤廃されるためだ。道内の生乳の7割以上は乳製品向けのため、乳製品の価格下落が道内の酪農家を直撃する。

 そのほかの主な品目では、牛肉が53億~106億円、小麦が22億円、豚肉が8億~15億円減少する。米国を除く11カ国による環太平洋連携協定(TPP11)も合わせると、農畜産物で最大496億円、水産物と林産物を加えると、最大518円、生産額が減少すると試算した。」(農畜産物生産 最大371億円減 道、日米貿易協定で試算 北海道新聞 19.11.19

 北海道の畜産現場は「価格では戦えぬ」と悲鳴をあげている(価格では戦えぬ 経営安定へ対策拡充を 日米協定強い懸念 乳用種産地の北海道士幌町 日本農業新聞 19.11.29)。さりとて、価格で戦うための「強い農業づくり」という政府の対応策が論外であるのも自明なことだ(FTA、EPA対策としての「強い農業」づくり支援は与党の選挙対策費 農業情報研究所 19.11.26)。ヨーロッパ農業政策は、農畜産物貿易自由化の嵐の中、そういう意味での「強い農業」づくりの支援、つまり専ら生産機能増強のための農業支援から農家が失う所得を直接支払で補償する政策(デカップリング)に、とっくの昔に踏み切っている(1992年 マクシャリーCAP改革―北林寿信 EU共通農業政策(CAP)改革とフランス農業の対応―「生産主義」克服の視点から レファレンス 1996.12要旨)。自由化を進めるなら、必要なのは日本農業政策のそういう方向転換である