農業情報研究所意見・論評・著書等紹介農業・農村・食料関係2020417 

 

八方塞がりの日本農業 出口を探る地方独自の試み

 

 米消費減少、輸入食料品の洪水に新型コロナ、行方は八方塞がり、真っ暗闇のトンネルの中に置き捨て棄てられたいるにも見える日本農業、救いは、かすかな光を求めて出口を探る地方独自の試みがあることである。決して農水省や“専門家”が推奨するものではありませんが、希望はこんな試みの中からしか生まれないように思われます。日本農林水産業:各地の動き:新聞報道から(過去1週間)で紹介した最近のいくつかの事例を再掲することにする。

 

 南信州産レモン広めよう 企業と商品開発も(長野) 中日新聞 20.4.17

 南アルプスの麓に位置する喬木村で、温暖な地域で生産されるレモンなどのかんきつ類や、熱帯果実の栽培に挑戦している農家がいる。県内の菓子店や有名ホテルにも出荷しており、四月からは地元企業との協力で新商品を発売。関係者は「南信州産レモン」を広めようと意気込んでいる。

 この農家は、Yanagi Farmを営む柳坪創太さん(36)と美紀さん(42)夫妻。当初は創太さんの両親がカーネーションの栽培を行っていたハウスを受け継ぎ、約五年前からレモンやパッションフルーツの生産を始めた。

 もともと、花き生産を志していた創太さん。県農業大学校時代、恩師が研究していたかんきつ類や熱帯果樹のハウス栽培に興味を持ち、研修旅行で訪れた沖縄県で初めて見たパッションフルーツ栽培に心を打たれた。イチゴのハウス栽培が盛んな喬木村で「人と違うことをしよう」と、徐々にハウスを南国フルーツに転用した。

 六・六アールのビニールハウスでレモンやライム、パッションフルーツなどを育てる。国内では広島県など主に暖かい地域で栽培されているレモン。県内で本格的に栽培している農家は二軒のみという。軽井沢町の軽井沢ホテルブレストンコートや県内の菓子店などと取引し、昨年のレモン出荷量は一トンを超えた。

 地域にレモンを広めようと商品開発も進む。喬木村商工会の紹介で、同村の小池手造り農産加工所が柳坪さんのレモンを使って、野菜に付けて食べるディップソースと焼き肉などに使えるソースを開発。南信州産レモンを使った商品として、四月中に村内外の直売所や道の駅で販売を始める。

 国産レモンは皮も安全に食べることができ、ソースにも丸ごと使用した。同加工所の小池知三社長(63)は「喬木でレモンを作っていると聞いて驚いた。さわやかに野菜やお肉を食べられるので夏の食卓におすすめです」とPRした。

 地球温暖化への対応も見据えて南国フルーツの栽培を始めたという創太さん。「南信州産レモンを地域に広め、イチゴのイメージがある喬木をレモンでも盛り上げたい」と意気込む。

 

活用調査からスタート ミナミシンシュウ 20.4.16

 遊休農地の活用や担い手の確保、特産品の開発などを通じ、下條村の農業活性化を目指すNPO法人「元気だ下條」(理事長・金田憲治村長)の開所式が13日に開かれた。村役場に隣接する老人福祉センター内の事務所前に、看板を設置。本年度は遊休農地の活用リスト作成をはじめ、親田辛味大根の生産振興とブランド化に向けた研究などに取り組む。村内にNPOが設けられるのは今回が初めて。

 遊休農地の活用に向け、水路や進入路などの周辺環境を含め、農地が実際に活用可能かどうかの調査から始める。昨年、同村農業委員会が農家へのアンケートを基にまとめた、貸し出し可能な農地240カ所を同法人職員2人が現地調査。本年度中に全箇所を回り、「遊休農地活用調査巡回表」を作成する。

 結果を農業委や村振興課などと共有することで、新規就農希望者や移住者らとのマッチング促進につなげる。

 また、来春には自己保全管理が難しい農地の管理や、耕起・代かき・田植えなどの作業を請け負い、実施事業者へ委託する事業に着手し、優良農地の荒廃を防ぐ。

 近年は生産量が減少している村の特産品で信州の伝統野菜に登録される「親田辛味大根」は、信州大学との連携によりブランド化を推進。土壌と辛味の関係性など3年計画で研究を行い、付加価値を高める。また、情報発信、販路開拓などを同法人が一手に担うことで、農家が生産に集中できる環境を整備し、生産振興を図る。

 来年度以降には、ふるさとワーキングホリデーの受け入れや中古農機具の紹介なども見据える。

 理事長の金田村長は「まずは農業で地域を元気にするモデルケースをつくり上げることで、商工業へも取り組みを広げていきたい」と力を込めた。

 

地元産の安全な野菜を 地域の話題 ミナミシンシュウ 20.4.8

 松川町で本年度から、地元産野菜を学校給食へ提供する事業が始まった。7日には、ジャガイモとニンジンの種まき作業を行った。単なる食材提供だけでなく、環境にやさしい農業の推進、遊休農地の活用、地産地消などにつなげようと狙う。

 同町の農業は果樹が中心。学校給食で地産地消を進めようとしても、町内産のみでは野菜などの食材を調達することが難しいという。

 町は、町内から賛同する農家やグループを募って「町環境保全型農業推進協議会」(仮称)を発足。学校給食への食材提供とともに、農薬や化学肥料をなるべく使用しない環境にやさしい農業での野菜栽培を普及させようと図っている。

 本年度は町内5つの畑でジャガイモ、ニンジン、ネギ、タマネギ、米を育て、学校給食に提供。自然農法国際研究開発センター(松本市)の協力で、栽培技術や土作りの講習、各土地に適した作物の検討、栽培マニュアル作りなども行う。

 7日は、増野の「楽しみまし農」(北沢ひろみ代表)の畑でジャガイモの種芋を植え、大沢南部のうしうしファーム(牛久保二三男代表)の畑でニンジンの種まきを実施。各作物の栽培についての座学も行った。

 このうち「楽しみまし農」は、増野の果樹農家20軒余による集落営農のグループ。「人・農地プラン」実質化のモデル地区として、農地利用を地域で話し合う中で始まった。昨年から遊休農地を活用して野菜栽培を続けている。

 これまで収穫した野菜は、年2回の収穫祭で活用したほか、参加農家で分け合うなどして外部に出すことはなかった。今年は町の呼び掛けに応じ、初めて学校給食に提供する。

 普段は果樹を手掛ける農家にとって野菜の作業は新鮮な様子。「腰が痛くなるな」「自分でジャガイモを育てるのは初めてだ」などと語り合いながら、メークインやキタアカリなど3種を植えつけていた。

 町環境保全型農業推進協議会の活動は、一般からも参加者を募って展開する。栽培やほ場見学、講演会など年10回ほどを予定している。

 

「里山を稼げる地域に」 白山麓の耕作放棄地でラム肉事業 「山立会」活動へネット出資募る(石川) 中日新聞 20.4.8

 ジビエなどを生産する白山市木滑の「山立会(やまだちかい)」は、白山麓の地域課題を解決しながらお金を稼ぐ仕組みづくりに奮闘している。耕作放棄地で子ヒツジ(ラム)肉を生産するため、六日からインターネット上で活動資金を集めるクラウドファンディングも始めた。代表の有本勲さん(36)は「里山を稼げる地域に変えていきたい」と意欲を見せる。(都沙羅)

 有本さんは二〇一七年、野生動物研究やジビエ生産など各分野のプロが集まる山立会を設立。季節ごとに収入源になる業種を変えながら、ジビエやナメコの生産、地産地消商品の開発をしてきた。

 白山商工会によると、山麓地域の小規模事業者数は三百六十五事業者で、飲食・宿泊業が最も多い。有本さんは「個人経営が多く、人口が少ない里山で大きな利益を生むことは難しい」と話す。

 ヒツジの放牧は一五年から、地域住民や県立大(野々市市)などが耕作放棄地で取り組んでいたが、県の補助金が終了したため一九年度で断念。有本さんは「もったいない。稼ぐ視点が必要だったのかも」と、ラム肉の出荷や飲食業を想定して受け継いだ。社員の川上隼人(はやと)さん(27)が情報発信し、四月からは飼育担当者として、調理もできる葛西正幸さん(40)を迎えた。

 課題は活動資金。好調なナメコ生産の収益金がたまってから始めることも考えたが、急速に過疎化が進む限界集落なだけに「一刻も早く行動したい」と資金を募ることにした。目標金額は八十万円で、放牧費や飼育者の人件費などに使う。

 有本さんは「目指すは里山総合会社。将来的には全国の里山で企業の支店のように展開していきたい」と期待する。

 クラウドファンディングは五月十五日まで受け付ける。支援のお返しとしてナメコやジビエを届ける。

 

旅先で野菜収穫、その場で味わう 彦根の団体が体験観光企画(滋賀) 中日新聞 20.4.16

 観光による地域づくりを推進する一般社団法人「近江ツーリズムボード」(彦根市)が、収穫した野菜をその場で味わう体験型観光商品「近江食材収穫体験と畑レストラン」(仮称)を企画している。

 車両に調理器具などを備えたフードカーを使うプラン。参加者は自転車で移動し、風景を満喫。畑に到着後、野菜を収穫し、フードカーで調理された料理を食べる。事前に準備が必要なメニューは調理した物をフードカーで運び、温め直して出す。

 滋賀の食といえば近江牛や近江米が有名だが、他にもおいしい食材があることを観光客にアピールするとともに、地元の人にも再認識してもらう。農家と接することで野菜作りへのこだわりやおいしさの理由も聞ける。

 一月には多賀町のニンジン農家と協力しモニターツアーを開催。メニューはいずれもニンジンを使ったカレーライスとスープ、ニンジンドレッシングのサラダだった。 参加者の一人、英国出身でインバウンド観光専門家のロッド・ウォルターズさんは「その場で食べられるのが新鮮。欧米人には体を動かすのが好きな人も多く、自転車移動も良い」と評価した。

 商品化に向け、雨天時の対応や自転車で移動する際の安全面の確保といった課題に取り組む。近江ツーリズムボードの担当者は「付加価値を高め、地元の魅力づくりにつなげていきたい」と意気込む。

 ツアーは早ければ今秋にも始める計画だが、新型コロナウイルスの影響を考慮し、開始時期を検討する。

   

体験型農園始めます 上富田の住民有志 紀伊民報 20.4.11

 和歌山県上富田町市ノ瀬地区を元気にしようと住民有志でつくる「一瀬里山会」(宮本和子会長、25人)は、5月から体験型農園「いちのせ里山農園」を始める。今年は10区画を予定しており、今月20日まで参加者を募集している。耕作放棄地を増やさないための取り組みで、宮本会長は「手ぶらで気軽に来て、楽しんでもらえたら」と参加を呼び掛けている。
 里山会は2016年に発足。休耕地でゴマを栽培したり、ヒマワリなどの花を育てたりしている。海峡を越え長距離を移動することで知られる大形のチョウ・アサギマダラが見られるようにと、アサギマダラが花の蜜を好むフジバカマの植栽も進めている。
 市ノ瀬地区では高齢で耕作できない農地が増えてきている。「農地の活用」と「担い手の確保」の両面から対策が必要と考え、体験型農園を企画した。「中山間地域における体験型農園の可能性や課題を検証するためのモデルケースにしたい」としている。
 里山会が活動する集落ではここ十数年、多くの住宅団地が造られ、約150戸あるうちの半数が転入世帯。この取り組みにより転入世帯に農業への理解を深めてもらい、地域コミュニティーの再構築につなげたいという。
 今回利用する農地は約740平方メートルあり、1区画は20平方メートル(5メートル×4メートル)。栽培計画や耕運作業、苗や種子、肥料の準備は里山会が行い、参加者は農家の指導で日常管理をする。栽培指導はJA営農指導員とも連携して月2回程度を予定している。
 手始めに夏野菜のナスやキュウリ、トマトなどを植える予定。初年は収穫物の持ち帰りも含めた諸費用は月500円としている。応募多数の場合は先着順で地元住民を優先する。