農業情報研究所意見・論評・著書等紹介農業・農村・食料関係2020年7月4日

 

無責任な食料自給率引き上げ論 食料安保の鍵は持続的小農民、と書きました 

 

 本日発売の『現代農業』誌(20208月号)に、「コロナ禍後、日本も、持続可能な小農路線に(意見異見)」なる拙文を載せていただいた(タイトルは編集者)。このHPでもたびたび言及してきたことに重なるけれども、その大意をここに書いておきます。

 

新型コロナパデミックで世界的食料危機が予想されるなか、食料自給率37%で大半の食料を輸入に頼る日本の食料安全保障(食料安保)は大丈夫か、あり得る輸入ストップに備えて農業生産基盤を強化、食料自給率を高めることが急務だといった声が高まっている。こう主張する人が言うような食料供給(生産)不足による世界的食料危機は近い将来予想できないし、(カロリーベースの)食料自給率を食料安保の指標とすることにも疑念がある(輸入ストップで国民一人一人が必要熱量の37%しかとれなくなる、あるいは63%の国民は飢え死にする、というわけではない)。加えて、食料自給率を高めよと言う人も、どうしたら食料自給率を高めることができるか、すべて失敗に帰したそのための従来施策(担い手育成、受け手自体が消滅しつつある中山間地域等直接支払制度など)以上のものは提起しておらず、「無責任」だ。

 

 新たな「食料・農業・農村基本計画」は「食料自給率」の概念から離れ、農地と農業労働力がこれまでの趨勢に従って減少しても、「農地と労働力をともに最大限活用されるよう最適化した場合の供給可能熱量は2,096kcal/人・日となり、ほぼ推定エネルギー必要量が確保される」と試算している。が、「誰」が「農地と労働力をともに最大限活用されるよう最適化」するのかは示せていない。

 

この「誰」とは、農家・農業経営(者)に他ならない。農業経営の「持続可能性」の確保によってこそ食料安保は確保できる。フランス、ヨーロッパの経験は、持続可能な農業経営とは近代化された大規模経営ではなく、「逆境からすぐ立ち直る弾力性を持ち、自分自身の資源(労働、経営資本、土地)で稼働し、価格の乱高下に対抗するための有効な<低コスト>戦略を持ち、社会の要請、景観・生物多様性保護の要請にもうまく対応できる」「小規模経営」であることを示している。

 

フランスでは、原産地呼称・地理的表示・伝統的特産品・山地呼称などの品質保証政策、厳しい食品安全基準や動物福祉・環境保全基準とその適用、農家の自家加工や直接販売(民宿、レストラン兼営を含む)など消費者と直結する流通形態が、消費者を安いだけが取り柄の輸入産品から遠ざけ、国産農産物・加工食品の販路の確保を可能にしている。それがフランス小農、従ってフランス農業の持続可能性を支えている。