農業情報研究所意見・論評・著書等紹介2013年4月19日

日本の農業と農村を自壊に追いやる産業競争力会議民間委員提言

  政府産業競争力会議の民間議員が農業競争力強化策の提言をまとめた。それは企業の農地取得を自由化農業生産法人への出資規制撤廃を求めている。環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加を控え、農業の競争力強化を狙う。

 企業の農地取得自由に 競争力会議、TPPにらむ 日本経済新聞 13.4.19
 http://www.nikkei.com/article/DGXNZO54136380Z10C13A4EE8000/

 日本経済新聞が伝えるところによると、

 民間議員の提言の柱は、企業が自由に農地を所有できるようにする点だ。現行ルールでは企業は農地を直接購入できず、期間のあるリース方式で借りている。長期的な視点に立った経営が難しいとの指摘がある。このため、民間議員は企業の直接購入の解禁を求める。

 農地を所有できる農業生産法人の認可基準の緩和も求める。認可の対象は株式会社の場合、現在、譲渡制限が付いた非公開会社だけ。対象を広げるように提言する。

 既存の農業生産法人への出資制限の撤廃も検討を促す。企業による買収を容易にするためで、半数の役員に年150日以上農業従事を求めるルールの撤廃も盛り込む。一般的な構成員の農業従事日数を年150日以上から50日以上に緩和することも求める。出資した企業が主導権を持ち、創意工夫で農産物の質や収穫量を高める狙いだ。

 民間議員はこのほか、信託方式を活用した農地の集約、コメの生産調整の縮小、農業輸出特区の創設、農業版ビジネススクール設置などを農業改革の重点課題に掲げる。

 TPPへの参加で関税の引き下げが進めば、海外の農産物との競争が一段と激しくなる。首相が掲げる「攻めの農業政策」には農地集約や企業経営手法の導入が課題と民間議員は考えている」という。

 今日伝えたばかりのヨーロッパ小農民の要求(州の農地集中と土地収奪 若者等の農業参入を阻む 小農民グループの新たな研究)と正反対の方向をめざすもので、農地を投機商品化させ、日本の農業とそれを基盤とす る農村社会のの完全な崩壊につながりかねない危険極まりない方向づけだ。

 「コメの生産調整の縮小」を求めるというが、消費減退傾向が覆る見通しは立たず、少々の輸出拡大ぐらいでは米価が上向くことはないだろう。ましてTPPで外国産米が国内市場に溢れるようになれば、大規模企業経営といえども、採算の取れるコメ生産などとても無理だ。グローバル化のなか、巨大小売業が価格決定権をもち、価格はどこまでも下がり続けるから、他の農畜産物とて同様だ。農業投資の収益性が見込めないとなれば、折角の自由化にも拘わらず、まともな企業はそんな投資に向かわないだろう 。自由化で競争力強化というのは絵に描いた餅にすぎない。

 それでも農地を取得するというなら、それは補助金目当てか、取得した土地を農外用途に売りさばく投機目的の投資家がすることだろう。真面目な農民の農地は奪い取られ、農業の衰退に拍車もかけかねない。農業競争力強化どころではないだろう。

 ついでながら言っておけば、フランスはかつて、規模拡大のための土地負担軽減のために農業土地集団(GFA)制度創設(1970年)、このGFAへの投資会社参加許容(1980年農業基本法)など、農業土地資本の農外からの導入を促すための借地農制拡大方策を考案した。しかし、農業収益減少とそれに伴う地価低迷(まさに日本の水田農業が直面しているような)で農地投資の魅力はすっかり薄れ、こうした方策は何の効果も発揮できなかった。設立されたGFAの大部分は、相続の際の土地分割、あるいは共同相続人への差額精算金支払いを回避するための家族GFAにとどまった(原田純孝 フランスにおける農地賃貸借と相続」 『農業法研究』 15・16、津守英夫 「フランスの農地政策と『農業土地集団』」 『農業総合研究』 36-2)。