農業情報研究所意見・論評・著書等紹介2013年4月24日

農水省 産業競争力会議に農地集積対策具体案を提示 「中間的受け皿」を通して「担い手」に

 昨日伝えた農水省の農地集積・耕作放棄地解消対策の具体的内容が、同日開催の産業競争力会議で明らかにされた。

 県農地中間管理機構(称)なる農地の中間的受け皿を整備、これを活用して 「法人経営・大規模家族経営・集落営農・企業」などの「担い手」に農地を集積する。

 この中間的受け皿は、分散錯綜した農地利用を整理し担い手ごとに集約化す必要がる場や、 受け手がすぐに見つからい場合耕作放棄地を含むこれら農地を借り受け(既存の農地保有合理化法人のように買い入れるのではなく)、まとまりのある形で農地を利用できるよう配慮して担い手に貸付ける(売り渡すのではなく)。

 この受け皿は手が見つかるまでの間、当該農地を農地として管理する。受け皿を中心とする総力で農地集積・耕作放棄地解を推進するために、その業務は一部を市町村・農民間企業等に委託する。そして、受け皿が積極的に活動できるよう国費を投入するという。

 耕作放棄地対策については、既存の耕作放棄地だけではなく、耕作していた所有者の死亡等により耕作放棄地となるおそれのある農地(耕作放棄地予備軍)も対とし、農業委員会は、所有者に対し、中間的受け皿に貸す意思があるかどうかを確することから始める等、手続の大幅な改善 と簡素化によって耕作放棄状態の発生防止と速やかな解消を図農地の相続人の所在がわからなと等により所有者不明となっている耕作放棄地については公告を行い、都道 府県知事の裁定によ中間的受け皿に利用権を設定するという

 第7回産業競争力会議(平成25年4月23日)への林農林水産大臣提出資料
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/skkkaigi/dai7/siryou09_1.pdf

 小規模農家・離農農家等が所有する農地を買い入れ(または借り入れ)、規模拡大により経営の安定を図ろうとする農家に売り渡す(貸し付ける)既存の「農地保有合理化事業」を改変・強化するものと受け とめることができよう。新制度が十分に機能するかどうかはその運用にかかっており、未知数だが、昨日述べたような自給的農家・兼業農家の排除に向けた圧力が一層高まる恐れがある。

 中間受け皿の業務の一部を委託される市町村・農協・民間企業は、「担い手」ばかりではなく、こういう農家にも十分配慮する必要がある。今の農業・農政関係者は、「将来にわたり広汎に存在するであろう土地持ち非農家、小規模な兼業農家、さらには生き甲斐農業を行う高齢農家などの役割分担の明確化を図ることが重要である」という「新しい食料・農業・農村政策の方向」(農水省、1992年6月)の言葉を思い起こすべきである。

 2010年現在、農家数は252万8000を数えるが、うち89万7000(35%)は「自給的農家」、137万4000(54%)が「土地持ち非農家」である (2010年農業センサス)。こういう農家は、「農地、農業用水その他の農業資源及び農業の担い手」(1999年農業基本法)と言われるような生産要素の一つに還元される「担い手」とは異なる、農村社会の生きた住民なのである。彼らは、まさにそうしたものとして扱わ れねばならない。

 加えて、「中間的受け皿」が借り受けた農地は、ヨーロッパ小農民グループが要請したように(欧州の農地集中と土地収奪 若者等の農業参入を阻む 小農民グループの新たな研究)、「健康的な地方の食品と持続可能な農業への関心」から農業への参入を希求する若者をはじめとする人々に貸し与えることも考えるべきである。彼らもまた、新しい生きた農村社会住民として受け入れられる資格がある。 農地法上の制約があるとは思わないが、もし制約があるというなら、法律の改正も行うべきである。 「担い手」への農地集積という従来路線の延長では、日本農業の未来は決して開けないだろう。

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