農業情報研究所意見・論評・著書等紹介2013年11月1日

農水省 飼料用米に数量払いで減反無用に 水田経営安定政策見直しのたたき台 

 農水省が10月31日、「日本型直接支払制度」と称する「多面的機能支払」や「経営所得安定対策」(戸別所得補償制度」の見直しに向けた政府・自民党の議論の「たたき台」を、自民党農業基本政策プロジェクトチームなどの合同会議に提出した。

 飼料用米に数量払い 経営安定対策で農水省 日本農業新聞 13年11月1日 1面
 飼料用米に数量払い 経営安定対策で農水省

 ここでは「米の直接支払交付金から振り替えて創設する日本型直接支払制度は、農業の多面的機能(?)を維持・管理するための協定を市町村と締結した集落などの活動組織に交付する(個別農家ではなく集落などの集団に交付するというのが「日本型」と呼ぶ理由?)。助成単価は示さなかったが、米の直接支払交付金より下がる見通し」(カッコ内は農業情報研究所)という日本型直接支払制度についてははさて置き、経営所得安定対策に触れておこう。

 「たたき台」は生産調整(減反)廃止とかその見直しには言及していない。江藤拓農水副大臣は、「生産数量目標がなくても農家の自主的な耕種変更などで、これ(生産調整)がなくなる世界を目指していかなければならない」と述べ、たたき台は「主食用米への支援だった米の直接支払交付金から、飼料用米など転作への支援で水田活用の直接支払いに大きく転換する考えを明確にした」ということだ。

 これを「自主的な」耕種変更と呼べるかどうかは別として、「水田活用の直接支払い」の充実で主食用米から飼料用米等への転作が大きく進めば、主食用米の生産調整の必要性は自ずからなくなるだろう。主食用米の価格は強要される生産調整なしでも維持されるだろう。しかし、当然ながら、その生産縮小から来る農家の所得減少が飼料米等生産拡大で埋め合わされなければ、農家所得の減少は避けられない。つまり、飼料米等の価格は主食用米価格と実質同等に維持されねばならないということだ。

 事はそんなにうまく運ぶだろうか。それが問題だ。主としてアメリカから輸入される飼料原料(トウモロコシ)との競争を考えれば、飼料用米価格が主食用米価格を大きく下回るのは避けられない。直接支払いでこの価格差を埋め合わせるとすれば (現在は10アール当たり8万円。大豆・小麦は3万5000円)、どれほどの財政負担が必要になるのだろうか。転作面積によっては現在の米直接所得補償のための財政負担 (1500億円ほど)を上回ることもあり得よう。これは「改革」と呼べるだろうか。

 同時に、こういう直接支払=国家財政負担で国産飼料の使用が進み、その結果としてトウモロコシ輸入が減ることになれば、とりわけアメリカとの貿易摩擦の激化は免れない。この直接支払は、たとえ「食料安全保障」(という多面的機能のため)の支払だと言い訳しても、それを聞き入れるアメリカ等ではない。貿易歪曲的補助金として国際社会の槍玉に上がるだろう。さりとてTPPなどで飼料輸入に歯止めがかからないとなれば、飼料用米需要が増えるはずもない。増産された飼料用米は過剰米として倉庫に積みあがるばかりだ。

 これは飼料用米への転作が以前から、ずっと抱えてきた問題だ。この問題は、少なくとも輸入規制・関税なとによる国境措置強化を前提としないかぎり、飼料用米生産性の飛躍的向上、輸入トウモロコシとそこそこ競争できるようになるまでの向上なしには、決して解決できないだろう。しかし、近い将来、そんな理想的な成り行きを誰が想像できるだろうか。農水省の「たたき台」も、結局は机上の空論に終わるのではなかろうか (超長期的には有用性を否定しないけれども)。