「地方創生回廊」は「地方葬送回廊」 リニア中央新幹線に踏み潰される大鹿村

農業情報研究所意見・論評・著書等紹介2016年10月15日

 大鹿村をご存知だろうか?本格的登山家や映画・大鹿村騒動記をご覧の方以外、あまり聞かない名前だろう。

 私が小学生時代を過ごした長野県下伊那郡「生田村」(現松川町生田)は天竜川中流の左岸にあるが、大鹿村はそこから伊那山脈を越えてさらに奥に分け入った僻地山村、東に塩見岳、荒川岳など南アルプスの高峰を仰ぐ。平家の落人部落という伝聞にふさわしく、赤石岳を源流として天竜川に注ぐ小渋川の峡谷伝いの道が外界につながる唯一の道路であった。この細道は今は片側一車線の舗装道路(県道小渋線)なっているが、私が小学生であった時代、この道を通るバスの車輪は路上にあっても、座席の下は深い谷底であった。

 そんな村の地下にリニアが通るトンネルを掘るという。トンネル掘削で大鹿村に出る残土は305万立方メートル、工事が始まれば一日1700台の残土運搬大型車両が小渋線を通ることになる。

 事業主体のJR東海が9月7日に開いた住民説明会では、暮らし欠かせない生活道路を塞ぐ工事車両について住民から不安や疑問の声が相次いだリニア説明会 誰の理解が進んだのか 信濃毎日新聞 16.9.9)。そこで昨14日、住民の理解を深めてもらおうと、2度目の住民説明会を開いた。しかし、住民は「これまでより一層理解と同意が遠くなった」と言う。

 「JRはトンネル2本を新設し、5ヵ所で拡幅工事をする。県道の2車線化を求める声があるが『不都合が生じた場合、県と相談して対応する』と現段階での2車線化を否定。渋滞、事故の心配については『運転手を教育し、交通誘導員を配置する』」と言うのみ、「沢田尚夫担当部長は終了後、『今日の説明会を終えて住民の理解が得られたと考えている』と述べた。今後の工事説明会は予定されておらず、沢田氏は『工事着手の条件は整った』と強調。リニア計画は県内初の本体工事開始に向けて大詰めを迎えた」とのことである(JR側、工事の都合強調 リニア、大鹿で住民説明会(長野) 中日新聞 16.10.15大鹿でリニア説明会 JR「住民理解得られた」 信濃毎日新聞 16.10.15)。

 安倍首相は今年1月、第190国会の施政方針演説でこう述べた。 

 「リニア中央新幹線が本格着工しました。東京と大阪を一時間で結ぶ夢の超特急。最先端技術の結晶です。

 三月に北海道新幹線が開業します。札幌へと工事を続けます。九州新幹線も着実に長崎へとつなげてまいります。東京から富山、金沢を貫く北陸新幹線も、敦賀へと延伸することで、大阪へとつながる回廊が生まれます。

 大阪や東京が大きなハブとなって、北から南まで、地方と地方をつないでいく。『地方創生回廊』を創り上げ、全国を一つの経済圏に統合することで、地方に成長のチャンスを生み出してまいります」

 地方と地方をつなぐ?村と隣町の行き来さえままならない。何が地方と地方だ。地方住民の生活を踏み潰して、何が地方「創生」回廊だ。地方踏み潰し回廊ではないか。私や私の恩師・古島敏雄先生の故郷も將に荒れなんとす。そんな回廊作りを告発する中央マスコミ一つとしてなく、これを阻止しようとする政治家も一人としてなきことを憂う。

   関連ニュース(16.10.16、17追記)

 ウラン鉱床点在、生活道路にトラック… リニア工事、拭えぬ住民不安(岐阜) 中日新聞 16.10.17

 リニア関連工事「住民の理解得た」 JR側、大鹿で説明会(長野) 中日新聞 16.10.16