農畜産物風評被害はどれほど深刻なのか 福島県資料から何を読み取る? 復興戦略の見直しが必要

福島風評被害農業情報研究所意見・論評・著書等紹介 2017年2月25日

 今日の日本農業新聞が、「福島産の農畜産物 震災後市場価格戻らず」と題し 風評被害がなお残ると強調している。復興庁が24日に開いた「原子力災害による風評被害を含む影響への対策タスクフォース」に福島県が提出した「福島県における風評に係る最近の動向(農林水産物)」に含まれる「主な農産物価格の推移」から、

 「震災前の桃の平均価格は1㌔439円(全国比44円安)だったが、震災年(11年)は222円と半値に暴落した。16年には399円に上向いたが、全国に比べると低迷を脱し切れていない・・・・。

 和牛肉の平均価格は震災前に全国平均と比べ1㌔当たり76円安だったのに、震災年には361円安と大きく下落。近年は全国的な高値を背景に価格が上昇しているが、全国価格と比べると16年も242円安と価格の開きは鮮明だ。

 米の相対取引価格(農水省統計から県推計)も、震災以前は60㌔当たりで全国比204円安だったが、16年は714円安と差が開いたままだ」と、風評被害の深刻さを強調している。

 日本農業新聞 17年2月25日 2面

 これには大いに疑問がある。風評被害が全くないと主張するつもりはないが、それが福島農業の復興を妨げる最大の要因だ、福島農業復興の鍵は風評払拭が握ると言い切れるほどに深刻なものとは言い切れないからである。

 福島県が出す価格データを改めて検証してみよう。震災前のデータとして2010年だけを取るのは危険だから2008年、2009年の数字も加えた。県が推計したという米の相対取引価格については推計方法が分らない(対象となる米の産地・銘柄など)ので、中通り・コシヒカリの各産年価格(2016年は12月の価格)で代表させた。以下の表のとおりである。

桃(東京都中央卸売市場 円/㎏) 

2008 2009   2010    2011   2012   2013   2014   2015   2016
福島 358 380 439 222 340 356 358 429 399
全国 428 423 483 406 455 478 469 527 514
対全国比・% 84 89 91 55 75 75 76 81 78

きゅうり(同)

2008 2009     2010  2011          2012   2013  2014  2015   2016
福島 234 248 268 269 189 300 316 303 294
全国 281 266 281 286 282 304 320 324 334
対全国比・% 83 93 95 94 67 99 99 94 88

米相対取引価格(円/60㎏)

   08年  09年  10年  11年  12年  13年  14年  15年  16年
コシ・中通り(A) 15131 14149 12486 14181 15854 12906 9829 12046 13639
全銘柄平均(B) 15161 14470 12711 15215 16501 14341 11967 13175 14315
A/B(%) 100 98 98 93 96 90 82 91 95

牛肉(東京都中央卸売市場 円/㎏)

 2008  2009  2010  2011  2012  2013  2014  2015   2016
福島 2160 1779 1708 1266 1359 1655 1685 2174 2447
全国 2234 1974 1784 1627 1722 1919 1986 2403 2689
対全国比・% 97 90 96 78 79 86 85 91 91

 さらに、これら全国比をグラフで示すと次のとおりである。

 絶対値の比較では見えない実相が見えてくる。桃に関しては大きな被害が感じ取られるが、米、牛肉では価格差は震災前の近くに迫っている(きゅうりでは、そもそも原発事故の影響が感じ取れない)。これを見て、どうして「価格の開きは鮮明だ」とか「差が開いたままだ」言えるのだろうか。風評払拭で福島農畜産復興という戦略の有効性が問われていないだろうか。こういう戦略は、福島第一原発事故で農畜産が被った被害を原子力災害そのものではなく、放射能に関する根も葉もな噂のせいに帰そうとする無責任体制だけが正当化する戦略ではなかろうか。汚染地域農民が直面するのは風評以前の問題だ(<帰還後どう生きる>除染影響 牧草地が荒廃 河北新報 17.2.24楢葉 来春にも帰還宣言だが… 農家「生活成り立たず」 東京新聞 14.6.10