農業情報研究所意見・論評・著書等紹介>>原子力関係:2017年12月13日

福島の空間放射線量 全国・海外主要都市と同水準 人を欺く政府風評払拭「戦略」

 政府が東電福島第1原発事故によって福島県が被った「風評被害」を払拭するための「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」を策定した。「知ってもらう」「食べてもらう」「来てもらう」の三つの視点で伝える対象や内容を絞り、複数のメディアを活用した情報発信力を強化する。

原子力災害による風評被害を含む影響への対策タスクフォース 復興庁 17.12.12

 戦略は大学教授や医療関係者などの意見を参考にしたというが、それにしてはお粗末だ。

 避難児童へのいじめが各地で発覚したことを受け、「日常生活で放射線被ばくはゼロにはできない」「放射線はうつらない」など、教職員や児童、生徒に対する放射線教育の充実を図る、「小売り・流通業者や在京大使館などに対し、県産農林水産物の魅力やおいしさを第一に、厳格な放射性物質検査の実施なども発信。外交ルートなどを通じ、輸入規制の緩和・撤廃に向けた働き掛けにも継続して取り組む」といいうのは、、効果は別としてまあいいだろう。

 しかし、「修学旅行生や外国人観光客」を呼び込むために「空間放射線量が全国や海外の主要都市とほぼ同水準であることを分かりやすく説明」するというは、効果がないどころか逆効果だろう。「空間放射線量が全国や海外の主要都市とほぼ同水準」というのが嘘っぱちであることは誰の目にも明らかだ。

 ちなみに、福島市と他都道府県諸市郡の「空間放射線量」には明白な差がある(各都道府県のモニタリングポスト近傍の地上1m高さの空間線量(平成29年12月10日測定分)、原子力規制委員会)。

地上1mの推計値は福島市の1.14μSv/hに対し、他市郡は最高でも0.85μSv/h(広島市)だ。福島市の1.14μSv/hでも年間被ばく量は1㍉シーベルトに達しないが、福島市内、福島県内にはこれをはるかに超える場所が少なくない。

例えば伊達市、年間被ばく量が1㍉シーベルトを超えるであろう0.20μSv/hを超える観測地点が23ヵ所中9ヵ所もある。0.66μSv/hの地点さえある(伊達市、市内定点観測地点の環境放射線測定 平成29年4月1日~平成29年12月12日 [PDFファイル/964KB])。

どだい、除染廃棄物の中間処理もいつ終わるか分らず、除染土袋が至るところにむき出しになり、折角除染した土を農地に埋めもどそうかなどという(農地の再生 模索続く 除染土再利用 福島民報 17.12.10)県内を旅して、「空間放射線量が全国や海外の主要都市とほぼ同水準である」など信じる人がいるだろうか。県や国が説明すればするほど、来県者の不信感は募るに違いない。

風評払拭には、事故収束への道を「事実」をもって示すほかない。それが嘘で塗り固めらているかぎり、風評払拭への道はない(福島原発事故風評被害は今(特報) 東京新聞 17.12.7 2425面;風評被害の源に福島第一原発 関係主要ニュース:2017年12月7日)。