農業情報研究所意見・論評・著書等紹介国際貿易>2018年3月11日

トランプ鉄鋼関税 わが国は免除をと経産相 米国の過ちを何故質さぬ

  世耕弘成経済産業相がブリュッセルでライトハイザー米通商代表部(USTR)代表と会談、「同盟国である日本の鉄鋼・アルミが米国の安全保障に悪影響を与えることはない」と、鉄鋼・アルミ輸入制限(関税賦課)の対象から外すように求めた。他方、米国が輸入制限を発動すれば報復関税も辞さない構えのEU・マルムストローム通商担当欧州委員氏との会談では、「大局を見失わないよう冷静に行動を」と求めたとのことである。

 米輸入制限、日本の除外要求 閣僚会談で経産相 日本経済新聞 18.3.10

 わが国だけはトランプ関税の免除を!自称アメリカ同盟国のトランプ詣での行列ができている。わが国も行列の最後尾にくっついたわけだ。

 ゴルフ界のレジェンドであるグレグ・ノーマンまで署名に駈りだした“アメリカとオーストラリアの相互に有益な二国間関係に悪影響を与える可能のあるいかなる行動”も差し控えられたしとするトランプ宛て書簡を送ったオーストラリアは、いち早く関税免除を勝ち取った(米輸入制限:豪も除外 トランプ氏「互恵的関係を約束」 毎日新聞 18.3.10)。わが国もこの寛容な措置のお相伴に与かろうというのだろう。

 だが、問屋はそうは卸さない。今週、北朝鮮の金正恩との会談についてトランプに説明するためにホワイトハウスを訪れて韓国使節はマティス国防長官に関税免除を要請した。しかし、この嘆願が功を奏すかどうか、答えは未だない。韓国は北朝鮮との緊張緩和で決定的な役割を担っているが、トランプ政府は韓国が中国の鉄鋼アンチ・ダンピング逃れに加担(船荷積み換え)していると主張している。

 問題は、トランプの措置により大打撃を受ける国の大部分がNAFTA(カナダ、メキシコ)、EU、日本、ブラジルなどの対米同盟国あるいは友好国であることだ。米国が日本を免除し、韓国は免除しないとなれば、この同盟・有効関係が揺らぐことになる。

各国が自国の鉄鋼・アルミ産業を保護しようとする動きは、Gゼロ」後の世界 主導国なき時代への道を開き、果てはWTOの貿易紛争解決のためのシステムの崩壊にもつながる。

米国に対する報復措置―ハーレイ・ダヴィドソ、ブルボン、コメ、インゲン豆、スウィートコーン、タバコ、ピーナツバターなどへの報復関税賦課―で対抗するEUの対応は自国の免除を願い出るのではなく、、かといって貿易戦争をしかけようとするものでもなく、米国に自省を促すことが狙いである。WTOの紛争処理に委ねるにせよ、直接行動に出るにせよ、「安全保障」のためと称して「同盟関係」を瓦解させるような米国の誤った行動を質そうとする正道だ(それで米国が改心するとは限らないが)

それとは反対にわが国だけは免除をなどと乞うことは、首相が「自由貿易のチャンピオン」でありたいと公言する国のやることではない。

関連ニュース

U.S. Allies Jostle to Win Exemptions From Trump Tariffs,The New York Times,18.3.9

Turnbull government 'called in' Greg Norman to lobby Donald Trump over tariffs.Sydney Morning Herald.18.3.9

コラム:貿易戦争を上回るトランプ関税「真のリスク」 ロイター 18.3.8

The story behind Trump's tariff decision and how the Washington establishment is losing the battle to little-known advisers,The Washington Post.18.3.6