農業情報研究所意見・論評・著書等紹介2014年11月29日

古色蒼然の安倍晋三近代化農政 首相に農政を語る資格はない

  「安倍晋三首相(自民党総裁)は27日午後、北海道釧路市で街頭演説し、若者らの就農を後押しするため、農業や酪農の大規模化・機械化を支援する意向を強調したとのことである。

 与野党、農業改革で応酬 就労支援か、所得補償か 河北新報 14.11.27

 これが自民党の重点政策とどう関連するのか、どこまで整合性があるのかは分からない。ただ、首相主導の政策運営が続くかぎり、農政が「大規模化・機械化」路線、言い換えれば古色蒼然たる「近代化」路線をひた走ることになるのは間違いないだろう。それでいいのか、農業者は自らの将来をかけた重大な選択を迫られている。どういう選択をするも自由だ。しかし、その帰結がいかなるものかは知っておかねばならない。それを知るには過去の経験に学ぶしかない。過去の経験に照らし、取りあえず次のことだけは言っておきたい。

 大部分の農業者にとって、「大規模化・機械化」の帰結は借金の増加、過重労働、離農である。1960-70年代のフランスの若者の経験がそれを物語っている。現在の生乳不足にもつながる北海道酪農家の経験もそれを物語っている(大型酪農家ほど底力がないマイペース酪農)。

  ところが、首相は恐らく、こんな話は聞いたこともないのだろう。フランス農業近代化の立役者だったエドガー・ピザーニ(1960年農業基本法農政制定時のフランス農相)やEUにあってドラスチックな構造改革を主導したマンスホルトも、後、とっくの昔に小規模・多面的機能農業の勧めに転じたこともご存じないに違いない。つまり、首相は過去の経験に全く学んでいない古色蒼然たる農業近代化論者であるということだ。彼には、そもそも農政を語る資格がない。