農業情報研究所意見・論評・著書等紹介2014年8月30日

日本農業新聞農政モニターの安倍内閣支持率 円安「資材価格高騰」でもなお45%が支持に「違和感」

 日本農業新聞による同紙農政モニターを対象とする意識調査の結果によると、第2次安倍晋三内閣への支持率は44.7%で内閣発足以来最も低い水準となり、「不支持」(54.7%)が「支持」を初めて上回った。安倍内閣の支持率は、発足時の66.0%を最高に60%前後の高水準で推移したが、昨年12月下旬の前回調査で53.3%に落ち込み、米政策の見直しなど一連の農政改革がスタート後初めての今回の調査でさらに8ポイント余り下げた。「経済や安全保障政策といった重要課題を官邸主導で意思決定する政治の進め方や、初年度となる農政改革への農家の不安などが支持率の低下につながったとみられる」という。

 内閣支持44.7% 資材、担い手対策要望 本紙農政モニター調査 日本農業新聞 14.8.30 1面

 しかし、当所としては、なお半数近い人が現内閣を支持しているということに、官房長官流に言えば「違和感」を禁じ得ない。

 「他にふさわしい人がいない」(30.0%)が内閣支持のり理由のトップと聞けば「違和感」も多少は薄れるが、60年安保闘争時、指導者としては何とも心細かった西部邁氏が東大駒場自治会委員長に選ばれたとたん稀有なアジテーターに変身、とうとう6・15国会突入にまで学生たち引っ張る指導力を発揮した例もある。民主党はじめ、支持率0.数%ではなく数%以上の政党からは(例えば野田前首相のごとく)そんな指導者は出そうにないが、もう少し少数政党にも期待があってもよさそうなものだ。それほどに、現在の安倍内閣がやることは目茶目茶だ。

 この意識調査の対象者に限れば、不支持の理由は「政策が評価できない」(47..5%)、「食料・農業重視の姿勢がみられない」(34.4%)が多かった。そして、農業再生のために力を入れるべき対策のトップには「資材高騰対策」(38.1%)が上がった。とりわけ、政府・自民党が最も尊重する専業農家では、この比率は46.7%に達したという。 近年の「資材高騰」は、下図が示唆するように、ほぼ100%、アベノミックスが誘発し、さらなる昂進が予想される円安がひき起こしたものである。

 

 農業生産資材価格は、今年4月の消費税増税で一斉に上がっているが、これに先立つここ2年ほどの値上がりも顕著であり、これを牽引したのが「光熱動力」と「飼料」、そして飼料高騰が誘発した「畜産用動物」(肥育に向けられる子牛など)の値上がりであることが明らかだ。農機具や農薬の価格は、消費税増税まで、それほど大きな動きはなかった。そして、光熱動力の値上がりが円安による石油等の輸入価格急騰を、飼料価格値上がりが、やはり円安によるトウモロコシや大豆滓(配合飼料原料)の輸入価格の上昇・高止まりを反映するものであることは言うまでもない。

 例えば飼料用トウモロコシ、国際価格(米国輸出価格)がトン300ドルほどのピーク時(2012〜13年前半)の輸入価格は平均3万2000円ほどだったが、国際価格が30%以上下がりトン200ドルほどになった今もトン2万8000円ほど、15%も下がっていない(参照:飼料用トウモロコシ輸入価格と米国トウモロコシ輸出価格)。2012年後半から始まった急激な円安のせいだ。国際価格の低下で落ち着き始めたかに見えた飼料価格、円安を契機に再び急騰が始まっている。

 こうして、アベノミックス=円安は調査対象者が二番目に重視する「担い手確保・育成対策」(36.2%)も瓦解させかねない危険をはらんでいる。そういう認識が広がれば、安倍内閣支持率はさらに下がるに違いない。しかし、「違和感」が払拭されるのはいつのことだろう。それまでに、どれほどの畜産農家、専業農家が廃業に追い込まれるだろう。

 関連情報

 3本の矢 的が外れた FT紙のアベノミックス総括記事より,14.8.27

 配合飼料価格安定制度見直し?・・・の補足説明 農業だけではない 国民生活を破綻させる円安誘導,14.8.4 

 配合飼料価格安定制度見直し?トウモロコシ・大豆国際価格急落の折に何故?,14.8.1