ベーシック・インカム農業情報研究所意見・論評・著書等紹介 2017年1月4日

フィンランド 失職者に基礎所得を無条件に支払う最初の国に?短期就労で減らさない 働くことが第一

トマス・ペイン 「農民の正義」の実現

 フィンランドが失業者に月々一定額(ベーシック・インカム、基礎所得)を無条件に支払うヨーロッパ最初の国になるかもしれない。

 フィンランドでは既に25歳から58歳までの失業者(フィンランド人)に毎月560ユーロを支払う20001月に始まったパイロットスキームがある。このスキームの下で失業者が得る所得は既存の社会保障手当に置き換わり、失業者が仕事を見つけた場合にも支払われる。

 フィンランド社会保障当局(Kela)は、この社会実験の狙いはレッドテープ(煩雑な官僚主義的手続き)・貧困、そして何よりも8.1%に上る高い失業率を減らすことにある。少しの稼ぎでも社会保障支払の大幅削減の引き金になる現在のシステムは失業者の働く気を奪ってしまう。基礎所得支払は数日、数週間働いても減らされることはない。働くこと、self-employmentが何よりも重要だという。

Kela2018年に拡充を望む政府支援スキームは、1797年、トマス・ペインが提唱したベーシック・インカムの構想(注)の世界初の国家試験になろうという。

昨年、スイスの国民投票はベーシック・インカム導入を75%の反対で拒絶した。社会福祉支出が現在のGDP19.4%から3分の1にまで上昇するということで、政府の支援もなかった。

しかし、ベーシック・インカムを導入しようとする動きは世界中に広がり始めている。昨年のEU28ヵ国の世論調査では、68%のEU市民が一定の形でのべーシック・インカムの導入に「決定的にか多分」賛成すると答えている。

今年、ユトレヒトなどオランダの7都市で、無条件、1週間の就労の義務付け、コミュニティ・サービスへのボランティア参加で追加支払など様々な形のベーシック・インカム実験が始まる。イタリアの都市でも昨年、最貧100家族への月500ユーロの支払などが始まった。カナダ・オンタリオでも今春、25カナダドル支払のパイロットプロジェクトが始まる。

ベーシック・インカム主唱者は、伝統的福祉システムよりも効果的で公平なシステムになる可能性があると言う。西洋世界では現在の仕事の3分に120年以内にオートマ化されるという予測がある。ベーシック・インカムはオートメーションによる生産性上昇の利得を一部の少数者ではなく、多くの人が共有できるようにする手だてと論じるエコノミストもいる。

ハワード・リードとスチュワート・ランスリーは昨年、経済・社会不安がますます増幅する時代の堅固なベーシック・インカムは、「不払い労働の巨大な価値を認めながら財政的自立性と仕事とレジャー、教育とケアの間の個人の選択の自由」を提供すると言っている(Book Reviews Howard Reed and Stewart Lansley, Universal Basic Income: An idea whose time has come?

以上はFinland trials basic income for unemployed,Guardian,17.1.3による。

晴耕雨読の生活を選ぶ者にも生きていくのに必要な最低限の所得は保障される。どのみち「過労死」を意味する自国語を持たない国々(英語でもドイツ語でも「karoshi」)の話である。唯我独尊・アベノミクスの国の指導者は気にしない、気にしない!

「社員の80%以上にもなるパートタイマーの方々に長い間働いていただくことは、採用活動や教育といった企業の負担を減らすことになり、また、生産性の向上のためにも不可欠だと考えております」(第1回 働き方改革実現会議<16年9月17日>における株式会社イトーヨーカ堂 人事室 総括マネジャー田中弘樹氏の冒頭発言)。こうして引き上げられた生産性の利益を一部会社幹部が独り占めするのが世界に誇るべき日本のやり方とでも言いたげだ。

注)1979年に公にされた「農民の正義」においてトマス・ペインが提唱した、国家基金から21歳に達したすべての男女に年15ポンドを、50歳以上の者には年金10ポンドを支払うという構想