民主党マニフェスト 日米FTA締結を提唱 方向感覚ゼロで日本の将来は真っ暗

農業情報研究所(WAPIC)

09.7.28

 民主党が、来るべき衆院選挙で「政権交代」を目指す[マニフェスト2009」を発表した。少なくとも大手マスコミは取り上げていないようだが、「米国との間で自由貿易協定(FTA)を締結し、貿易・投資の自由化を進める」(7 外交 51 緊密で対等な日米関係を築く)そうである。

  http://www.dpj.or.jp/special/manifesto2009/pdf/manifesto_2009.pdf

 これは、民主党が政治・政策の方向感覚を完全に喪失していることを明白に示す。

 第一に、世界の二大経済が排他的なFTAを結べば、ガット→WTOが築いた多角的世界貿易システムが瓦解の危機に曝される。無差別原則に基づく多角的貿易システムは、世界大戦にまでつながった関税同盟による世界の分断を回避し・世界平和を維持するための第二次大戦後世界の基本的システムの一つとして構築されたものだ。欧州経済共同体(EEC)→欧州共同体(EC)の設立、北米自由貿易協定(NAFTA)の発効などにより、この無差別原則は、実際には侵食されてきた。しかし、これは、世界が理想とすべき歴史的基本原則である。その放棄につながるであろう日米FTAの締結の提唱は、この党が歴史的方向感覚を持たないことの証左である。

 第二に、政府間で妥結しながら自動車産業等基幹産業の損害を恐れる米国議会の抵抗で未だに発効を見ない韓米FTAの例に見られるように、ましてオバマ政府の下では、日米FTAは実現が難しい。しかし、万が一実現となれば、日本 とEUや農産物輸出国との関係は険悪化する。日本外交が失うものは巨大である。民主党は、日米FTAの実現可能性の問題も含め、国際政治に関する方向感覚を完全に失っている。

 第三に、もしも日米FTAの実現となれば、1.4兆円を投じる「戸別所得補償制度で農山漁村を再生する」(4 地域主権 31)などの公約の実現は完全に吹き飛ぶ。米国からの輸入品の洪水で農山漁村が受ける損害は1.4兆円どころではない。農山漁村は壊滅の危機に曝される。農山村(とそれを多く抱える地方)はオーストラリアとのFTAに対してさえ拒絶反応を示しているのに、それをはるかに上回る損害が確実な日米FTAを「政権交代」の絶好機に提唱するとは、国内政治感覚も麻痺しているとしか言いようがない。

 「戸別所得補償制度」で自民党から流れた農村票のすべて、あるいはそれ以上の農村票が民主党から逃げ出す可能性がある(もしも、民主党マニフェストが日米FTA締結を掲げたことが広く知られるならば)。農村票に逃げられては、政権交代も夢の夢となる。

 方向感覚ゼロの党が政権に就くのでは、日本の将来は真っ暗だ。とはいえ、多少ともマシな方向感覚を持った政党は圧倒的な少数政党でしかない。現状では、逃げる票の受け皿もない。日本の政治がまともな方向感覚を取り戻すためには、自民-社会の55年保革対立体制に逆戻りするしかないのかもしれない。