民主党 日米FTAで軌道修正 知的レベルの低さと政権担当能力欠如が一層露呈

農業情報研究所(WAPIC)

09.7.30

 自民党その他の政党や農業関係者の猛反発で、「マニフェスト2009」に掲げたばかりの、「緊密で対等な日米関係を築く」ための「米国との間で自由貿易協定(FTA)を締結し、貿易・投資の自由化を進める」公約(参照:民主党マニフェスト 日米FTA締結を提唱 方向感覚ゼロで日本の将来は真っ暗)を、民主党が早速、「事実上修正」した(「農産物自由化を否定/民主党が声明、日米FTA公約を事実上修正」 日本農業新聞 09年7月30日)。

 日本農業新聞によると、声明は、米国とのFTA交渉で「日本の農林漁業・農山漁村を犠牲にする協定締結はありえないと断言する」とし、農産物貿易の自由化を前提にしたFTA締結を強く否定、日米FTA交渉で「米など重要な品目の関税を引き下げ・撤廃するとの考えをとるつもりはない」とも強調した。

 さらに、菅直人代表代行は29日の会見で、日米FTA問題をめぐり「わが党として米などの主要品目の関税をこれ以上、下げる考えはない」と言明したということだ。

 来るべき衆院選挙で農村票を失うことを恐れての場当たり的な軌道修正だが、日米FTAの問題は、農産物貿易の一層の自由化と農産物輸入関税の引き下げで「日本の農業・農村社会を崩壊に導く」(自民党)ことだけにあるわけではない。

 それはそれで大問題だが、根本的問題は、それが、第二次大戦後の国際政治経済秩序の要の一つをなす無差別・最恵国待遇の原則に基づく多角的貿易システムに対する挑戦であるということにある。民主党は、この多角的貿易システムに代わるいかなる世界システムを構想しているのだろうか。あるいは、そんなことは知ったことではない、対米関係さえ良好に保たれれば、ヨーロッパやオーストラリアやブラジルや中国やインド、その他多くの途上国との関係など、どうなっても構わないとでも言うのだろうか。

 そのうえ、日米FTAの推進で日米関係が良好に保たれる保証もない。そもそも、「米など重要な品目の関税」の「引き下げ・撤廃」を含まない日米FTA交渉に米国が応じるはずもない。工業品の先進国間貿易障壁は、今までのガットでの交渉で、最低限のレベルに引き下げられている。米国が日本とのFTAに利益を見出すとすれば、農産物貿易の分野(関税撤廃、 韓国との交渉で行ったようなBSE問題による牛肉輸入規制の緩和・撤廃など、日本の工業品輸入関税は、皮革・衣料品・繊維を除き、既にほとんど無税になっている)においてである。これを除外し、他の国との関係も悪化させるであろうFTAなど、米国には有害無益であろう。こんなFTA交渉など、米国もお断りだ。

 要するに、この軌道修正は、政権交代を目指すにしては余りに貧しい民主党の政策立案能力と、国際政治経済に関する知識レベルの余りの低さを、一層鮮明に露呈するということだ。民主党に政権担当能力はない。もし政権を担当することになれば、「世界の中の日本」の将来は非常に危うい。

 もちろん、このように言うことで自民党政治に肩入れするつもりはない。日本の政治家が必要な知識を持ち、まともな方向感覚を取り戻すためには、先ず何よりも、二大政党体制を解体する必要がある。それによってこそ、まともな方向感覚を持つ政治家個々が育つ。