鳥インフルエンザ農業情報研究所意見・論評・著書等紹介2017年1月21日

鳥インフルエンザ雑感 鳥インフルエンザと戦うもっと有効でスマートな戦略はないのか

  今季も家禽の鳥インフルエンザが世界中で猛威を振るっている。韓国では今までに3000万羽を超すニワトリやアヒルが殺処分され、卵が高騰、輸入に頼る状況になっている。ヨーロッパではH5N8鳥インフルエンザで150万羽が殺処分され、フランスではフォアグラ業界の損害額は1億2000万ユーロ(約150億円)に達している。日本でも既に100万羽以上が殺処分されている。野鳥の感染が確認され、養鶏農家は鶏舎に鼠や雀さえも入り込めないようにする万全の家禽感染防止策を講じた。それにもかかわらずこのあり様である。

 前に書いた通り、「人が見れば密閉された鶏舎も、自然から見ればも穴だらけ」、「オオハクチョウから鳥インフルエンザウイルスの陽性反応が検出された水戸市大塚池近くの養鶏農家が「渡り鳥が飛来するこの時季、鶏舎を防鳥ネットなどで覆ったり、周辺に石灰を散布したりするなどして、ウイルスが鶏舎に入り込まないよう防疫対策に取り組んでいる」が、「それでも小動物やスズメなどの(鶏舎への)侵入を100%防げるわけではない。一度発生したら終わりだ」と危機感を募らせるのも「むべなるかな」である(鳥インフルエンザ蔓延の兆し 野生動物の鶏舎侵入防止策にも大穴 「一度発生したら終わり」,16.12.3注1

 鶏舎を完全密閉して感染を防ぎ・万一一羽でも感染すれば舎内の鳥すべてを殺して地中に埋めることで感染拡大を防ぐ、鳥インフルエンザとの戦いのための世界標準戦略の無効性を主張するつもりはない。そんな努力はすべて無駄だと言えば、日夜防疫に心血を注いでいる養鶏業者の怒りを買うだろう。私が言いたいのはそういうことではない。水戸市近郊の養鶏農家が言うように、人がどんなに努力してもウィルスの侵入を「100%防げるわけではない」というにすぎない。

 そこから出てくる結論は、そんな戦略は無益ということではなく、もっとスマートで有効な戦略はないものかということである。 「専門家」と言われる人への問いかけだ。

 見本は人のインフルエンザ対策にある。インフルエンザの流行期にも、人はマスクはしても外出や屋外活動をやめるわけではない。不幸にして感染、死亡する人もいないではないが、大抵の場合は自然に形成される免疫力やワクチン接種で感染を免れ、感染しても重症化を免れている。家禽にマスクはかけられないが、密閉鶏舎から解放、ワクチン摂取の励行も含め人間並みに扱うことで免疫力を付けさせる、そんな鳥インフルエンザ戦略があってもいいのではないかと思うのである。

 だが、それには現在のような人工的大規模・過密・集中養鶏を改めねばならない。それはずっと言われてきたことだが、「経済」がそれを拒んできた注2。しかし、余りに自然離れした農業は自然とは戦えない。そういう農業を自然が限界にまで追いつめている。そう考えられないだろうか。

 鳥インフルエンザ、大規模・集中養鶏の構造再編が必要―FAO声明,04.1.31

 ワールドウォッチ報告 工場畜産の世界的拡散と環境・健康・コミュニティー破壊に警告,05.10.1

 鳥インフルエンザ危機の根源は工業養鶏、野鳥や庭先養鶏ではないーカナダNGOの新研究,06.2.27

 今のような安価で大量の卵や鶏肉の供給はできなくなるだろう。しかし、それで消費者と生産者はどれほどの損害を被るというのだろうか。3000万を超す鳥が処分された韓国の消費者と生産者が被る損害よりずっと少ないに違いない。

 鳥インフルで卵の価格が高騰 韓国政府が対応策を発表 朝鮮日報 17.1.3

 注1今月8万羽の鶏の感染が確認された岐阜県山県市の養鶏場の現地調査(農水省)によると、「鳥インフルエンザが発生した鶏舎は、敷地内に八棟あるうちの一棟で、窓がない平屋。壁や天井に野鳥などが外部から入り込むことができる隙間がなく、壁の一部に設けた通気口の金網にも破損はなかった。鶏舎横の飼料タンクも、ふたがされていた。・・・発生鶏舎の周囲には普段から石灰がまかれ、従業員らが鶏舎に入る際も入り口で専用の長靴に履き替えた上、長靴と衣服を消毒していた」そうである(山県の鶏舎、隙間や破損なし 鳥インフルの調査続行(岐阜) 中日新聞 17.1.21

 注2:改善の動きが全くないわけではない。主に動物福祉の観点からの規制に基づくものだが、小規模農民的農業(企業的農業の対極)や持続可能な農業を求める生産者自身に発する動くもある。いくつかの例をあげれば、

  South West sustainable egg farmer fights blanket environmental policy geared at large-scale farms,ABC,17.1.21

  オーストラリア フリーレンジ卵改めパスチャード卵 11万羽の基準決定で放し飼い卵生産者,16.9.9

  カリフォルニア州 向きも変えられない狭い空間での採卵鶏飼育を禁止へ,08.11.6

  EU 肉鶏福祉指令に合意 許容最大飼養密度を設定,07.5.8