持続可能なバイオエネルギー利用 何が重要か コメのバイオ燃料化だけはお断り

農業情報研究所(WAPIC)

09.4.4

 小生も投稿した金沢大学人間社会学域経済情報センターの最新のNEWSLETTERに、小生の投稿よりもよっぽど有益な明和工業株式会社代表取締役:北野 滋氏に対するンタビュー記事:「炭化・ガス化技術とバイオマスエネルギー、地域社会(後編)」が掲載されている。これは、地域社会がバイオマスエネルギーをどのように利用すべきか、大変な示唆に富む。

 特に、

 @近年次々と動き始めている大規模発電プラントなど、大きなプラントは燃料供給が長くは続かない、「小さな規模のエネルギープラントこそ持続可能」だ、

 A「山の計画的利用」が重要、「山にはたくさん木質バイオマスがあると容易に考え、再生スピードを考慮せずに利用すれば、あっという間に丸坊主になってしまいます」、

 B「循環の視点」も必要、「たとえば、農業廃棄物である籾殻などを農地に還元せずに全て燃料として利用してしまうと、土壌の珪酸分が足りなくなってしまいます」、

 C「炭素の塊としての炭を農地に投入することで炭素固定になる点を評価したらどうかと思っています。炭に温暖化対策という新しい働きが期待できるわけです」

 などの指摘は大いに傾聴すべきである。いずれも07年の国連報告(国連バイオエネルギー影響評価報告 バイオ燃料産業急拡大に警告,07.5.10)が強く注意を促していたことではあるが、日本の中央官僚や政治家、そして学者も、ほとんど顧みるところがない。藁や林地残材をどれほど農地や林地に残すべきかなど一切顧慮することなく、使えるものは全部エタノールにしてしまうというバイオ燃料大増産計画が立てられている。

 同じ号に、鈴木宣弘東京大学大学院教授の「バイオ燃料生産と世界の食料問題」も掲載されている。その中で、現時点ではコメが過剰だが、不測の事態に備えて水田機能を維持しておくために、コメをバイオ燃料にすることを考えるべきだとしておられる。通常時に余るコメは飼料米、米粉、バイオ燃料米、備蓄米などに回して水田のコメ生産機能を維持、緊急時には国内の主食用に回せば、日本の食料安全保障にも貢献できる、というのである。

 農業関係者には間々ある発想で、もっともらしく聞こえるかもしれないが、これだけはやめるべきである。コメから作るバイオ燃料といえば、車の燃料として使われるエタノールしかない。車の燃料が最低限満たすべき要件は供給の安定であるということを、農業関係者は、ともすれば忘れがちである。

 食用米が必要になったからといってエタノールを減産すれば、消費者のエタノール燃料への信頼は崩壊する。燃料スタンドに行っても、今日は品不足で売れませんというのでは、誰もエタノール燃料など使わない。ブラジルは、コメではないが、サトウキビでこの失敗をした。この失敗から立ち直ったのは、エタノールとガソリンの混合比を自由に変えられるフレックス車が普及し始めた2000年代に入ってからである。エタノールが足りなかったり、高かったりすれば、ガソリン100%の燃料で走ればよい。逆の場合は逆だ。

 ところで、日本の車をフレックス車に入れ替えるには、何年かかるだろうか。どれほどの経済的コストがかかるだろうか。想像もできない。それとも、コメエタノールが足りなくなったときには、輸入で調整するとでもいうのだろうか。それでは、エネルギー安全保障というバイオ燃料の大々的導入の目的自体に反することになる。

 そもそもコメをエタノールにするという発想自体がおかしい。そのためには、少なからぬ化石燃料を使わなくてはならない。どうしてもコメをエネルギー用に利用したいなら、天日で干して直接燃やし、熱と電気を生産するほうがずっと効率的だ。しかし、コメを直接燃やすなど、とんでもないバチあたのそしりを免れない。エタノールにして燃やせば、バチあたりのそしりを免れる思っているふしがある。