野菜や魚は天から降ってきた? 『家族の勝手でしょ!写真274枚で見る食卓の喜劇』を読んで

農業情報研究所(WAPIC)

10.3.19

 3月17日、2〜3日だけ掲載しておくつもりで、このHPのトップページに次のように書いた。

 ”『家族の勝手でしょ!写真274枚で見る食卓の喜劇』(新潮社、2010年2月)なる本が出版された。「1960年以降に生まれ、首都圏に在住する子供を持つ主婦を対象とした、家庭の食卓調査」の2003年から2008年までのデータを使い、首都圏家庭の食生活の実情を「定性的」に明らかにしたものという。「本書に掲載した写真[食卓に乗ったものすべてを撮ったもの]、および発言[調査対象者の]については、ネット上を含め、講演や出版物等への一切の無断転載・転用を固く禁ずる」とされているので、この本を読む以外、首都圏家庭の食生活のあまりのデタラメぶりを実感する方法がない が、何よりも腹立たしいのは食べ物が日々得られることへの感謝の気持ちがまったく感じられないことだ。農家は首都圏家庭に食材を一生延命提供する農業などバカらしくてやってられないと思うだろう。こんな消費者のための食料自給率向上もクソ食らえだ。国内農家はストライキ、食料輸入もすべてストップ、こんなショック療法以外打つ手はない、というのが筆者 が描く妄想である。”

 しかし、これをこのHPから永久の消してしまうのはちょっともったいないかと、本書の内容について多少の書き足しをした上で、残しておくことにした。上記の「写真」を再掲するわけはなく、不本意ながら調査対象者の「発言」をそのまま「転載・転用」するわけでもないので、なんとか許されるのではないかと思う[自分の考えをできるだけ広く知ってもらうために著作権など一切こだわらないと宣言したフランスの偉大な哲学者:アンリ・ルフェーブルにならう著作家や出版社はゼロのようだ]。これを見れば、消費者が食べ物やそれを作った人への感謝の念など微塵も抱いていないというのが納得できるだろう。野菜や魚は天から降ってくるかのようだ。これも携帯全盛の中、他者への思いやりをすべて奪われてしまった現代の縮図だろうか。

 第1章 健康志向とその正体

 1 子供の便秘とその理由

 野菜を食べない(食べさせない)ために子供の便秘が増えていることについて。

 便秘の子供を持つどの主婦も、それが野菜摂取不足のせいとは考えていない。小食、運動で汗をかくのに水を飲まない、給食の牛乳を飲まない、朝ゆっくりトイレに行く時間がない、遺伝体質、学校でストレスが多いなどといいわけする。便秘問題と切り離して野菜料理について聞くと、野菜料理は家族が喜ばない、料理の手間がかかるから作りたくない、野菜は高くて使いきれないから買いたくないし、置きたくない、洗ったり・皮を剥いだり・切ったりするのが面倒、生の野菜は使い勝手が悪いから冷凍ものしか使わない、等々。

 野菜農家への感謝の気持ちなど微塵もない。むしろ迷惑だと言わんばかりである。野菜農家は喜んでくれるのは直販所に来る地元消費者だけと心得るべきだろう。

 3 素ラーメン・素パスタ・素焼きそば

 家族は野菜嫌いで料理に野菜を入れたくないない、作り手は面倒な手はかけたくない、これが重なって、薬味さえも入らない「具なし」料理が拡大しつつある。かつては外食すると野菜が不足するということだったが、今では家で食べていると野菜が不足する。

 4 お菓子化する食事とその理由

 かつては子供がお菓子でお腹がいっぱいになるとご飯が食べられなくなると心配したものだが、今は、子供が食べたがるものにして「あげたい」から、好きなものじゃないと子供が食べないから、食べないよりはマシだから。お菓子・ケーキが大好きな「夫」もいる。休日の朝はお菓子やケーキ、夫は既に「脂肪肝」。

 第2章 昔の常識、今の非常識

 3 明暗分ける実家の差し入れ

 義母から無農薬の米や野菜を送られながら、実母にコーンフレークやフライドチキン、屋台のお好み焼きを買ってもらってこの方がおいしいと喜ぶ主婦。

 田舎のお母さん、お米や野菜を送るのはもうやめましょう。かえって迷惑なようです。

 4 人数分出されない魚料理

 毎日の食卓に魚料理と肉料理を交互に出したいとは主婦の理想だが、これを実行しているのは多く見積もっても5%程度。子供は骨を嫌がり、主婦は料理が面倒で家族分買うと高いと言い、魚じゃ食べた気がしないと言う亭主もいる。生鮭と塩鮭、生魚と干物の区別がつかない主婦も増えている。加工魚の増大で、鮮魚かどうかも旬がいつかもあいまいになってきている。

 誰かが食べて喜ぶ顔を想像して荒海での漁に励む漁師さん、これではやる気をなくすだろう。

 あとは本をお読みください。