COP14 農水省が堆肥増投による温暖化ガス削減を提案 堆肥源はどこに?

農業情報研究所(WAPIC)

08.12.1

 ポーランド・ポズナニで今日から開かれる国連気候変動枠組み条約第14回締約国会合(COP14)で、わが国農水省が、「堆肥等の施用を通じた農地土壌の温室効果ガス排出削減に向けた取組みについて」提案するそうである。

 気候変動枠組条約第14回締約国会議(COP14)等の開催について 08.11.28
 http://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/kankyo/081128.html

 提案の具体的内容については何も言及がないから、ふたを開けるまで分からない。ただ、今年3月には食料・農業・農村政策審議会企画部会が同部会地球環境小委員会がまとめた報告:「地球温暖化防止に貢献する農地土壌の役割について」*を承認しており、概ねこの報告の線に沿ったものになるのだろう。

 *http://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/kankyo/pdf/080321-02.pdf

 この報告は、全国の農地土壌に対して堆肥を10アール当たり1.0〜1.5トン(水田:1.0トン、畑:1.5トン)施用すると炭素貯留量が年間約220万トン(二酸化炭素換算で808万トン)増加する一方、水田土壌からのメタン発生が6.8〜27.4万炭素トン増加、差し引き炭素193〜204万トン分に相当する温室効果ガス排出量が削減できると試算した。この削減量は、京都議定書第一約束期間におけるわが国の削減目標量である2,063万トン(炭素、二酸化炭素換算7,655万トン)の約1割にも相当する。

 ただし、「実際の吸収量の算定に当たっては、たい肥等の有機物が全国に遍在していること、農業者にとっては労働時間、コストの増嵩を招くこと等の要因を勘案する必要がある」としていた。

 COP14 で提案するということは、このような実施上の問題はあるものの、2013年に始まるポスト京都の第二約束期間においては、わが国は、[目標値を示すかどうかは別として]ともかく農地を重要な炭素吸収源と位置づけ、約束期間における農地土壌の吸収量増加分を排出削減量に計上することを決意したということであろう。

 しかし、この決意は本当に実現できるのだろううか。報告が指摘するような農業者の「労働時間、コストの増嵩」の問題をどう乗り越えるのだろうか。化学肥料に慣れきった農業者の意識の改革とともに、財政支援も含めた大規模な支援が必要になるだろう。生産コスト上昇が消費者価格に跳ね返る恐れもあるから、消費者の意識改革も必要になるかもしれない。さもないと、安価な外国食料への依存が一層深まるだろう。それは”フードマイレージ”の「増嵩」を通じて、温室効果ガスの排出増加にも帰結するかもしれない。

 このような問題よりも何よりも、そもそも意味あるほどの量と質の堆肥を作るための資源はどこにあるのか。堆肥源となるバイオマスの未利用分は、バイオ燃料の生産のために総動員されることが既に決まっている。

 国産バイオ燃料の大幅生産拡大(バイオマス・ニッポン総合戦略推進会議)
 http://www.maff.go.jp/j/biomass/b_energy/pdf/kakudai01.pdf

 とすれば、堆肥増産のための資源はまったく残されていない。同じ農水省内部で、改めてバイオ燃料資源と農地土壌資源の分捕り合戦を始めようというのだろうか。しかし、後発の農地側の勝ち目はほとんどない。

 わが国は、世界的バイオ燃料ブームのなか、専ら”食料と競合しない”ことを売り文句に、稲藁等を原料する何時実用化されるか誰も知らない第二世代バイオ燃料、セルロース系バイオ燃料の大規模生産を目指した。

 ところが、多くの科学者や国連食糧農業機関(FAO)が警鐘を鳴らしていた、本来土に戻されるべき植物残滓の除去(バイオ燃料化)の土壌構造の劣化や養分減少(つまり農業・食料生産の持続可能性への悪影響)、温室効果ガス排出増加といった影響は一顧だにしなかった。こうした影響を最小限にとどめながらバイオ燃料化できる植物残滓はどれほどあるのか、米国やEUでも行われてきたそんな最低限の評価さえ行うことなく、セルロース系エタノールに突進した。

 問題の根源はそこにある。「堆肥等の施用を通じた農地土壌の温室効果ガス排出削減」を本気で考えるのならば、バイオ燃料政策の根本的見直しから始めねばならない。

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