農業情報研究所意見・論評2012年2月14日(17日:追補) 

東大研究者 玄米放射性セシウム濃度100ベクレル超の地域でも米作付けを

 東大大学院の長澤農学生命科学研究科長らが13日、2011年産玄米の放射性セシウム濃度が100Bq/kg(1キログラムあたり100ベクレル)を超えた地域でも2012年産米の作付けを制限するのではなく、試験栽培を行うべきだと提言した。

 農水省が100Bq/kgを超えた地域での作付制限を検討するとしていることを受けての提言である。こういう地域で作付制限をすると、玄米の放射性セシウム濃度の経時的変化が把握できなくなる、不作付け水田が荒れる、地域の農業復興を断念させかねないなどというのが理由だ。

 特に放射性セシウム濃度が高い水田のデータを取ることが重要、生産された米はバイオエタノール等の生産に利用することもできるなどともいう。

 私も、玄米の放射性セシウム濃度が新たな食品規制値を超えることを恐れての地域一律の作付制限には賛成しない。しかし、商業栽培にせよ、試験栽培にせよ、無条件には賛成できない。

 たとえば警戒区域、計画的避難区域における作付制限は、何よりもそこに居住し・生産活動を行うことによる生産者やその家族の被曝を回避し、あるいは低減するために行われるのであって、玄米の放射性セシウム濃度が規制値を超えるかどうかは二の次の問題であるはずだ。

 ところで、生産者やその家族の被曝を回避するための措置を講じるべき地域は、これら区域に限られるわけではない。居住地域なら大騒ぎになるホット・スポットが福島県内だけではなく、東北・関東の多くで見つかっている。ところが、居住地域なみの調査を行えば多くのホット・スポットが見つかる可能性が高い農地やその周辺については、土壌の汚染度や空間線量率の綿密な調査は、ほとんど進んでいない。

 作付・農業活動の制限に関する論議は、何よりもこのような調査の結果を踏まえたものでなければならない。このような調査は、「地域の農業復興」の大前提のはずである。地域の農業復興を断念せざるを得ないとすれば、何よりも、国や県がこのような調査に一向に乗り出そうととしないからだ。

 先月28日、一橋大学と農林中金が「チェルノブイリの悲劇と教訓をどう生かすか」をテーマに、原発災害からの復興、再生を考えるシンポジウムを開いた。JA新ふくしまの菅野孝志専務は、科学的な放射線濃度の検査体制の充実と詳細な放射線量を示す農地マップの作成の必要性を訴え、農林中金総合研究所の石田信隆理事研究員は、「徹底した土壌の調査と農産物の検査を国の責任として展開すべきだ」と強調したという。それなしには、的確な対応策(作付制限、除染、除染・エネルギー作物作付け、移住など)は講じ得ない。

 放射線量把握を マップ作成提案 一橋大と農林中金復興シンポ 日本農業新聞 12.1.29

 試験栽培の前に、まずなすべきことがある。どうしてもデータが欲しいなら、研究者自ら、「特に放射性セシウム濃度が高い水田に踏 み込んで農作業に従事すべきだろう。

 追補(2月17日):100ベクレル超の稲わらの飼料や敷料としての利用も制限されることになる。米のことばかり考えていると、行き場のない大量の稲わら(やもみがら)の堆積でニッチサッチもいかないことになることは考えているのだろうか?