新型インフルエンザ 豚はいくら感染しても構わない?

農業情報研究所(WAPIC)

09.5.15

  インフルエンザA/H1N1が北欧を含むヨーロッパの多くの国に伝播、日本、韓国、中国、香港、タイ、マレーシアなど東アジア、東南アジアにも広がりつつある。もはやパンデミック化は明らかなのだが、「ウィルスの毒性」(って一体何のことか、筆者には理解できない)が想定以上に弱いとかで、「強毒」インフルエンザパンデミックを想定して予め設定された、人間の感染拡大を防ぐための新型インフルエンザ対策を杓子定規に適用することへの批判の声が高まっている。このこと自体については、筆者にはなんとも判断 しかねる(「弱毒」と言っても、病人、妊婦、年寄り、子供などの「弱者」では重症化することも多いだろう。無闇に感染防止策を緩めていいものだろうか)。

 しかし、議論がこの問題に集中してしている間に、カナダでこのウィルスが豚に広がり(カナダ・アルバータ 豚が人からH1N1インフルエンザに感染 ウィルス変異のリスク,09.5.5)、500頭の豚が殺処分されたことがまったく忘れてしまったように見えることはなんとも腹に据えかねる。このウィルスが豚に感染、豚にも何らかの症状が出るであろうことはカナダの例で示されている。しかし、感染した豚の肉を食べても安全だと強調するばかりで、FAO、OIEなども、豚の監視を強めよとは言うもののの(FAO、OIE、WHO、WTO 豚肉製品は安全だが豚は監視すべきと共同声明,09.5.3)、人から豚への感染防止には一言も触れない。日本農水省は、豚の監視強化の措置さえ講じたようには見えない。豚はどれほど感染してもかまわないとでも言わんばかりだ。

 豚への感染でウィルスが「強毒」に変わるかどうかは知る由もない。しかし、日本でも養豚場近くの人や養豚業者・労働者に感染が広がり、不用意に、あるいはそんなこととは知らずに豚に近づく人からこの豚インフルエンザが広がれば、豚肉消費が減るのは間違いない。大量の豚が、人のお陰で殺されることになる。狂牛病と同じだ。牛はどれだけ死んでも、人間さえ無事ならばいいではないかというあの風潮の復活だ。