実施体制の不備を忘れた新型インフルエンザ対策行動計画の「柔軟な適用」 

農業情報研究所(WAPIC)

09.5.23

 厚生労働省が「新型インフルエンザ対策行動計画」の杓子定規な適用をやめ、地域の実情に応じた柔軟な対応を決めた。「現行の「新型インフルエンザ対策行動計画」等については、強毒性の鳥インフルエンザ(H5N1)を念頭に策定されたものであるが、今回のウイルスの特徴を踏まえると、@国民生活や経済への影響を最小限に抑えつつ、感染拡大を防ぐとともに、A基礎疾患を有する者等を守るという目標を掲げ、対策を講じることが適当である」と言う。

 新型インフルエンザ対策基本的対処方針 厚生労働省・新型インフルエンザ対策本部 09年5月22日
 http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/dl/090522-03a.pdf

 「国民生活や経済」への影響の大きさ恐れる地方自治体とマスコミが一体となった要望に、遅ればせながら応えたものであろう。しかし、今回の新型インフルエンザが本当に「強毒性」と言われるものであったとしたら、どうなっていたのだろうか。経済的影響がいかに大きかろうと、こんな甘えは許されなかったであろう。「国民生活」への影響というのが何を意味するかは知らないが、計画通りに行動すれば医療体制がパンクしてしまうということも含まれるとすれば、国民は堅固な感染防止措置で護られることなく、適切な医療を受けることもできずに、バタバタ死んでいくほかなかったであろう。

 しかし、対応の柔軟化は、実際のところ、経済的影響への恐れというよりも、必要な医療体制が未だ整っていなかったからではないのか。とすれば恐ろしいことである。 「強毒性」新型インフルエンザはいつ発生してもおかしくないと言われてきたからだ。今回の「新型インフルエンザ」から学ぶべき最大の教訓は、 行動計画は柔軟な適用が必要あるということよりも、その万全の実施体制を早急に作り上げる必要があるということでなければならない。たまたま「弱毒性」だったから、自治体やマスコミは、まるで鬼の首でも取ったように政府の「硬直的」態度を責めることができた 。政府もこれに応えることができた。それだけのことだ。もし「強毒性」だったら、自治体も、マスコミも、行動計画実施体制の確立を怠ったと、政府を一斉に非難することになったであろう。また非難するだけでは済まなかったであろう。