農業情報研究所意見・論評・著書等紹介2015年11月26日

TPP関連政策大綱 またまた大法螺 国産農産物の消費拡大なしの農業成長産業化はない

 政府が25日、未だその日本語全文が公表されておらず・従って影響評価も終わっていないばかりか、米国議会の批准の見通しが立たないために発効さえ危ぶまれるTPP協定に備える「総合的なTPP関連政策大綱」を決定した。

  政府 TPP政策大綱 中小と農業支援が柱 東京新聞 15.11.26

  [徹底 TPP報道] 攻めの農業に転換 輸出促進体質強化 経営安定策も拡充 政策大綱決定  日本農業新聞 15.11.26

 農業に関しては、輸出促進など「攻めの農業」に転換を促す一方、経営安定対策拡充で「守り」を固めるという。しかし中身は空疎、またまた安部政府と自民党の無責任な大法螺吹きが始まったという感慨しかない。筆者はかつて、農業・農村全体の所得を今後10年間で倍増させることを目指したかつての「農林水産業・地域の活力創造プラン」 (2013年12月)を「論じ甲斐のない」と断じたが、「大綱」も全く同様に「論じ甲斐のない」と言うほかない。

 *第二次安倍政権の農政改革を問う―米政策見直し・構造改革と農業・農村・農民 世界(岩波書店) 2014年4月号 188-197頁

 それでは味も素っ気もない?ならば、ここでは「論じ甲斐のない」一つの証拠を示すことにしよう。農業に関して具体的政策目標として盛り込まれたのは輸出額1兆円目標の前倒し達成だけだが、それが実現したとして、それはどれほど「農林水産業の成長産業化」(首相、TPP「攻めの農林水産業に切り替えるチャンスに」 日本経済新聞 15.11.25)に寄与するのか。かつて言ったことを繰り返せば、

 「農水省は輸出額目標を掲げて数字上の辻褄合わせをするだけである。その上、この目標が実現したとしても、農業生産の直接生産物に関しては米・米加工品が一三〇億円から六〇〇億円、青果物が八〇億円から二五〇億円、牛肉が五〇億円から二五〇億円、花卉が八〇億円から二五〇億円、茶が五〇億円から一五〇億円に増えるだけである。これらすべての増分は合わせて一一一〇億円、二〇一二年の農業総産出額八兆五二五〇億円の一・三%にしかならない。倍増させるという農業所得の増加への寄与率はゼロにも等しい」(世界 同上)。

 農業の成長産業化には輸出ではなく、内需=国産品需要の成長が不可欠である。ところが、自給率が低い小麦・小麦加工品の消費は増え続け、飼料を大量の輸入に頼る肉類の消費の増加も止まらない。国産ほぼ100%の米の消費は減るばかり、成長部門とされる野菜・果実の消費も低迷、魚食離れも進んでいる(下図参照)。しかも価格が低迷するなかでである。それでどうして「成長産業化」なのか。成長産業化には、これら国産食料の消費拡大が不可欠だ。そんなことは不可能だ?ならば、「成長産業化」は大法螺というほかないのである。

 体質強化・生産性向上、輸出促進を言う前に、何よりも国産食料消費拡大策を拡充・強化せねばならない。やるべきことはいくらでもあるはずだ。例えばアメリカのChild Nutrition Programs(Child and Adult Care Food ProgramFresh Fruit and Vegetable Program National National School Lunch ProgramSchool Breakfast ProgramSpecial Milk ProgramSummer Food Service Program)。だが、「大綱」は消費拡大には一言も触れていない。

 なお、「守り」については、これは基本的には市場喪失と価格低下による所得損失を補償するものだが、それがどれほどになるのか、どれほどの財源が必要になるのか、それで再生産を保証できるのか、今は評価のしようがない。

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 データ出所:国民健康・栄養調査