中医学・漢方(東洋医学)    
 


  東洋医学とは西欧に対する東という意味で、西アジア、インド、東南アジア、中国などの広い地域の医学をさします。そして東洋における医療の主流と位置づけられているのが、インド古典医学(アーユルベェーダ)中国医学、チベット医学の三つです。アジア全般で行われている医療を総称して、東方医学といいます。

 漢方             
 約二千年前の漢の時代に確立されたという中国の医学は、自国では「中医学」と呼んでいます。その中医学が遣唐使などの往来で仏教とともに日本に伝わりました。中国医学は漢の時代に成立していたということから日本では「漢方」といいますが、本来は「方技」または「方術」とよんでいました。西洋医学が日本に入ってからは区別するために漢方とよぶようになったのです。



 中医学の日本への伝来

 3~4世紀頃朝鮮半島の医術が日本に伝来、7世紀初頭からは直接交通において中医学が入り、以来16世紀頃までは中国の各時代の医学を模倣しました。
 

 中国から見た日本の医業

 中国は自国では中医学といい、日本の医学に対しては「東の彼方にある国」東洋(トンヤン)の医学になります。


 中医学と漢方
 同じかというと、少し違います。日本は江戸時代鎖国制度をとりました。そのことで日本は中国の中医学と交渉が途絶えたのです。鎖国の前までは、本場の中国の知識や技術、経験を豊富に蓄積しましたが、鎖国をした日本は、中医学を学ことなく乗り遅れていきます。つまり中医学と漢方は同じではなくなった、事情が違ったのです。



 漢方の衰退

 16世紀後半以後、日本に西洋医学が入ってきました。鎖国をしていた日本にとって通称相手はオランダ一国、医学もオランダ医学でした。これを蘭方と呼びました。18世紀には杉田玄白らの解体新書(1774年)が刊行され、蘭方は勢いを強めるようになり、19世紀頃には蘭方と漢方とが対立するようになります。そして次第に漢方は衰退していきます。



 蘭方の隆盛
 西洋医学が勢力を得た背景には、解剖学、種痘法の伝来、またモルヒネなど、強力な薬物の導入が起因しています。

 

 明治政府と医業

 明治維新後、西洋文化の社会風潮のもと、医学は西洋医学が医学の中心の座に座り、漢方は明治8年以降存続しがたい状況に追いやられていきました。

 鍼灸療法は失明者救済のため鍼灸師という業種が認められ、明治以降、漢方医療衰退後も絶えることなく現在にいたっています。


 西洋医学と医師
 明治以降の医療は、西洋医学を学びその試験に合格した者に限られ、漢方を如何に勉強、研究しても医師として認められなくなりました。従来漢方を業としていた者はその代(後にその後継者一代のみ)が漢方医として医療を行うことを許されました。そのようなことから漢方は廃れていきます。しかし、西洋医学を学び医師になれば研究は自由だったので完全になくなることはありませんでした。


 漢方の復興

 明治43年、医師の和田啓十郎が著した「医界の鉄槌」は漢方医学の優秀性を訴えたものでした。またその弟子の湯本救眞は、
昭和3年「皇漢医学」3巻を著し漢方医学復興の原動力になりました。この書は現代文で書かれた漢方の初めての解説書です。


 漢方の復活
 昭和25年「日本東洋医学界」の設立、この会には漢方を研究する医師、薬学者、文献学者、鍼灸専門家が参加しました。この会は研究を発表する会で、昭和52年、文部省(当時)から「社団法人日本東洋医学会」として認可されました。
 
 昭和47年「日本漢方医学研究所」が厚生省(当時)から法人として認可されました。この会の前進は昭和34年に設立された「漢方友の会」です。この会は漢方医学講座の開催を主目的として設立されたものです。

 昭和52年漢方処方製剤の数十種が健康保険に適用されました。



民間療法


 現在の日本においては、国で認める医師免許を有して行なう治療以外を、一般に民間療法と呼びます。定義は「民間で発見し、または伝えてきた病気の治し方」。
 
 民間療法にもさまざまあって、国家資格を有するもの、そうでないもの、いろいろですが、その技術を持って職業となす時は法によって定められた範囲内で行ない逸脱してはなりません。
 
 国内の医師免許所有者は、民間療法を認めようとしない風潮にありますが、東洋医学の長い歴史によって育まれてきた療法は世界にも高い評価を受け、WHO世界保健機関も経穴(ツボ)の存在を認めています。東洋医学の保存療法は、病める身体と心を正常に導く、古来、先祖から子孫に伝えられた最良の贈り物なのです。日本は西洋医学重視のあまり、東洋医学を排除しようとした時代もありましたが、今は民間療法として見直されています。
 
 江戸時代の医者の定義は「自分は医者である」と宣言、自己申告することによって医者になれたが、現在は医師免許を有さない者は医師としては認められません。これは一般常識のある者なら誰でも知っていますが、民間療法は少し事情が違います。 それは、民間療法には法制化されている療法と、そうでない療法があることです。
 
 民間療法は、法的解釈では「施術」と呼びます。 国内の民間療法は多種あるが、特に有名なのが「整体術(療術)」とアメリカ生まれの輸入療術「カイロプラクティック」です。共に治療法の共通点として、身体の歪みに着目をして徒手技術を施します。
 
 指圧、按摩、マッサージの治療院にも、整体の表示を見かける様になったのは、それだけ「整体術」の効果が優れているためだと思います。しかし本来、指圧、按摩、マッサージは、体調不良の改善を主とする慰安的な療法であり、整体術やカイロプラクティックとは、徒手技術の上ではかなり違います。
 
 整体とカイロプラクティックは、職業として認められてはいても、日本はいまだ法制化されていない。理由として、整体やカイロプラクティックの徒手技術を、厚生労働省が重要視していない、と言うのが根本にある、と思われます。(国の財政、医療費問題も‥‥)。
 人の体は、関節部位の亜脱臼によって発症する疾患が数多くあります。そして、その症状を改善し正常な身体に導くのが徒手技術です。 今や徒手技術は、健康を願う人にとっては欠くことのできない施術法です。


近代の整体(療術)   

 国内には、整体術・カイロプラクティック・オステオパシー・エステ・リフレクソロジー・足医術(フットセラピー)・痩身術・タイ式マッサージ・フーレセラピー(足圧法)他、さまざまなボディケア、リラクゼーション健康法があり、これらはすべて療術です。ストレス社会の現代日本は療術なしには健康を保つことができないほど心身が疲れています。そんな暮らしの中、身近な健康法といえば、やはり整体術ではないでしょうか。

             

 
整体の進化       

 整体術(以下、整体)の原型は中国から入って来た、というのが一般的な定義ですが、それがいつの日か日本の整体となって定着、発展しました。思うに、異論もあるでしょうが、整体は日本が発祥の地といえるでしょう。沖縄の空手、嘉納治五郎が創始した柔道もまたしかり、原型の伝来はともかくとして、創始された土地が発祥地なのです。

 整体は大正時代にはほぼ確立されていたと云われていますが、まだその頃は漢方の流れをくむ、いわゆるひとつの「術」でした。その術はどこからあみ出されたかというと、それは武術の中にある手技法からです。整体は武道医術のひとつの分野なのです。武道医術は古来より日本に伝わる伝統医学です。切り傷や骨折などを治す、それが武道医術、武道医学です。日本には武道があります、そして傷や骨折を治す術は裏武道、つまり、整体は裏武道から生まれた一つの術なのです。


 整体の確信

 整体の技術理論は近年目覚ましく進歩しました。整体の発祥の原点は中医学(経絡・経穴理論)を基礎とすることから出発していますが、新たに西洋医学の解剖学が加わり、手技法の本質的作用がさらに明らかになりました。それは、身体運動の神経伝達理論、すなわち、関節の動きの低下、また骨格の歪みがもたらす神経への悪影響です。それは、体の偏りや歪みが引き起こす免疫力の低下「気」の枯渇にもつながります。そして、そのような体に悪い状態を改善するのが整体です。中医学及び西洋医学の解剖学を総合、分析すると、まさに手技療法の効果、正しさが証明されたと言えるでしょう。


 整体の確立

 体を整えることがいかに大切かということは昔からわかっていたことです。よく耳にする言葉に「姿勢が良い」「姿勢が悪い」これは体だけにあてはまる言葉ではありません。生活の中でも使われる言葉です。「仕事に対する姿勢」とか‥‥それほど姿勢は大事ということです。

 心身共に疲れていたら、すべてに意欲が減退します。体の栄養は口から入れる食べ物だけではありません。花の美しさ、清流の水の流れなど、自然の清らかさは安らぎを与えてくれます。それが「癒し」です。

 癒しは他にも沢山あります、音楽もそうです。手技療法、整体もそのひとつなのです。整体は人の手による癒し、それは免疫力の活性を促すと同時に体のバランスを整えることが出来る、それが整体です。整体は中医学理論より出発し、近年は筋肉や骨格などの解剖学理論を組み入れ技術は著しく進歩しました。まさにそれは、整体の確立と言えるのではないでしょうか。そして確立からさらに進歩していくことでしょう。

 
 整体の未来


 療術の国家資格…国内の療術の統合、それが法制かへの道と言えるでしょう。整体、カイロプラクティックなど、国内にはさまざまな療術が種々あり、それぞれが「○○療法とは違う」といいます。しかし、基本的には近しく、決して統合できないことはないのです。指圧、按摩、マッサージが良い例です。法(国家資格)によって統一されています。本来、整体は指圧や按摩とは一線を画す療術ですが、将来的は指圧、按摩、マッサージ法に組み入れられる可能性も‥‥だがそれを望むものではない。整体は整体の技術を持って整体といえるからです。それが多くの整体師の本音だと思います。

 けれども組み入れられる可能性、それは考えられることです。特にエステなど、マッサージにちかいリラクゼーション手技法は大いにありえることです。いずれは療術も国が定める国家資格(可能性)の基準下におかれる?のではないかと思うのですが、それが何時の日か、現状で判断することは出来ません。いずれにせよ、今こうして社会に手技療法師として貢献出来ることは整体師にとって大いなる喜びではないでしょうか。

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