農業情報研究所グローバリゼーション二国間関係・地域協力ニュース;2013年3月15日

TPP 交渉参加 日本は米・砂糖・乳製品関税維持のために闘う 牛肉・小麦は犠牲に 生源寺名大教授

   ブルームバーグ・ニュースによると、かつて農林水産省食料・農業・農村政策審議会委員を務めた 生源寺眞一名古屋大学農学部教授が12日、安倍晋三首相はTPP交渉に参加することにより日本の牛肉と小麦の貿易保護を犠牲にすることになろうと語ったそうである。

 教授によると、日本は米、砂糖、乳製品の関税を維持すために闘うことになろう。TPP交渉で全物品のおよそ5%の関税は維持できそうだ(その根拠は?)。米は国民の主食で、砂糖は沖縄県にとって死活的に重要、牛乳は子どもの飲料だ。食料安全保障を確保すために米と牛乳の国内生産は維持しなければならないが、牛肉関税は他の品目ほど高くなく・和牛は輸入品と競争できる高級品だから譲歩しやすいという。

 農林中金総合研究所の清水徹朗研究員によると、38.5%の牛肉関税撤廃で米国・オーストラリアなどからの牛肉輸入が40%増える。また、門田正昭製粉協会専務理事によると、小麦の252%の関税と政府一元輸入制度の撤廃で小麦輸入は年60万トン増えるという。

 Japan May Open Beef in U.S.-Led Trade Talks, Former Adviser Says,Bloomberg,13.3.15

 ただし、これは教授の確かな根拠に基づく予測なのか、ただの感触なのか、それとも希望なのか、定かではない。また、アメリカとの交渉で米、砂糖、乳製品は「聖域」扱いになったとしても、これを他の交渉参加国が受け入れるとは限らない。オーストラリアやベトナムが米の例外扱いを認めるだろうか。オーストラリアやニュージーランドが乳製品の例外扱いを認めるだろうか。オーストラリアが砂糖の例外扱いを認めるだろうか。そんなことになれば、これらの国にとって日本の参加による利益はプラスどころかマイナスになりかねない。