欧州食品安全機関、米国未承認GM米の健康リスクはありそうにない 

農業情報研究所(WAPIC)

06.9.16

  EUの食品リスク評価機関である欧州食品安全機関(EFSA)のGMOパネルが15日、米国の未承認遺伝子組み換え(GM)米・LLRICE601を含む輸入長粒米は、このGM米含有量が微量であるかぎり、人間と動物が消費しても切迫した安全上の問題を生むことはありそうもないという声明を発表した。この声明はリスク管理機関である欧州委員会と加盟国に提出される。ただし、これは現在利用できる 形態・成分データと新たに導入された蛋白質の毒性評価に基づくもので、完全なリスク評価のための十分なデータはないという。

 EFSA’s GMO Panel provides reply to European Commission request on GM rice LLRICE601、06.9.15
 http://www.efsa.europa.eu/en/press_room/press_release/llrice601.html

  これは、利用可能な科学的データを検討し、これらのデータがEU立法に従う安全性評価を実行するのに十分であるならばその結果を知らせよという欧州委員会の要請に応えたものである。パネルは9月13日と14日の会合で、このGM米を開発したバイエルクロップサイエンス社からのデータ、このGMに非常に類似したGM米系統に関する既存の科学的データ、米国当局が行ったリスク評価 などあらゆる関連科学情報を検討した。

 その結果、利用可能なデータは、この米の安全性をEFSFの指針に従って評価することを可能にするには不十分であり、完全なリスク評価を行うことは不可能であるという声明を出した。しかし、利用可能なデータに基づき、次のように結論することになったという。

 ・データはPATと呼ばれる新たに導入された蛋白質の存在を示唆する。パネルは以前に他のPAT蛋白質を評価し、これらがいかなる健康問題ももたらすものでないと結論した。

 ・形態学的、農学的パフォーマンスと成分の分析に関しては、この米は通常の米と(PAT蛋白質は除き)大きく異なることはないが、現在、この仮定を検証するデータは欠如している。

 ・加盟国におけるこの米への暴露のレベルは提供されたデータからは正確に推定できず、この米が供給される米に含まれる程度についてはほとんど分かっていない。しかし、米国のデータは偶然の混入のレベルは低いことを示唆している。

 ・利用可能なデータに基づき、パネルは微量のこの米を含む輸入長粒米の消費は人間または動物にとっての切迫した安全上の懸念をもたらすことはありそうもないと考える。

 このような声明にもかかわらず、また米国の安全性評価にもかかわらず、EU独自の完全なリスク評価に基づき販売が承認されたものを除くEU未承認のGMOはEU市場で販売できないというのがEU法の定めである。この米を含むいかなる米製品もEU市場に出回らないことを保証するために欧州委員会と加盟国が取った措置が変更されることはないだろう。

 なお、この米の市販米製品への混入はドイツとスイスで既に確認されていたが(欧州に広がる米国未承認GM米汚染 市販米国産米の2割のサンプルに検出,06.9.13)、その後フランス当局も、米国米の90%以上を輸入する業者から採られたサンプル19のうち、7つにこの米を検出した。混入レベルは0.1%を下回っているという。

 Les autorités françaises confirment la trace d'OGM dans du riz importé des Etats-Unis,Le Monde,9.14
  http://www.lemonde.fr/web/article/0,1-0@2-3228,36-813228@51-795895,0.html