欧州に広がる米国未承認GM米汚染 市販米国産米の2割のサンプルに検出

農業情報研究所(WAPIC)

06.9.13

  11日に開かれたEUのフードチェーン・動物保健常設委員会で米国の未承認遺伝子組み換え(GM)米(LL601)をめぐる現状が明らかにされた。輸入米のGM汚染は大きく広がっているようだ。

 GM rice situation reviewed at the Standing Committee on the Food Chain and Animal Health,9.12

 米貿易の90%にかかわる欧州精米連盟は、既に承認された検査方法を使って162のサンプルを検査したが、そのうちの33のサンプルにLL601が検出されたことを明らかにした。これらの貨物のすべては市場から回収された。連盟メンバーは、検出された場合には今後もすべて回収することを約束した。

 加盟国のコントロールに関しては、2つの加盟国(フランスとスウェーデン)の一般的スクリーニングが販売されている検査サンプルにLL601が含まれる得ることを示唆したが、LL601を検出するための2つの承認された検査のうちの1つを使って検証する必要があるという。しかし、多くの加盟国代表は、この検査が実行できるようになるのは1−2週間後と報告した。これらの方法で既に検査を始めた加盟国は、今までのところ検出していない。

 すべての加盟国は、委員会決定(EU法の一種)が定める緊急措置を実施、米国からの長粒米がLL601を含まないと認証されているかどうか国境でチェックしている。

 オランダ代表は、LL601混入の疑いでロッテルダム港に貯留している米国からの2万トンの船荷に関する新たな情報を伝えた。今までに検査されたはしけのうち、3つのはしけの貨物でLL601が検出された。他の20のはしけの荷には検出されなかった。検出された荷は引き続き貯留、米国に送り返されるか、廃棄されることになるという。

  これとは別に、スイス最大の小売業者も1500トンの貨物のなかにLL601が発見されたと発表した。貯蔵サイロは封印したが、既に汚染米が販売されたかどうかは不明という。 また、グリーンピースは、独立試験所の検査により、ドイツの大手スーパーで、フランス全体でも700の店舗を持つアルディ・ノルトが販売する米にLL601を検出したと発表している。

 Genetically modified rice hits Switzerland,NZZ,9.13
 US illegal GE rice contamination spreads further into Europe(Greenpeace),9.11

 なお、グリーンピースと地球の友が中国からの輸入食品にGM米を発見した件については、欧州委員会は発見を確認するためのあらゆる情報とサンプルの権限ある当局への提出を要求、関係加盟国によるこれらの発見の検証を待っているという。欧州委員会は、さらなる情報を要求する書簡を中国当局に送り、また産業と加盟国に対しては市場に出ている米製品のコントロールを強化するように求めた。

 なお、この件に関しては、中国側は外交部報道官が、商業栽培を許されたGM米は中国には一つもないと分かりきったコメントを発しただけだ。実態調査に乗り出すつもりはまったくないようだ。

 Spokesman: no case of commercialized production of GM rice approved in China,xinhua,9.7

 欧州委員会の書簡もなしのつぶてとなるだろう。日本の中川農相も、「今のところは、グリーンピースの情報しかないわけでありますから、早急に中国あるいはEUにどういう状況なのかを確認する。これは、念には念を入れてとりあえずストップするという判断もあると思いますけれども、まずきちっとした政府としての先方の対応をとりあえずは待ちたい」、「これはずるずる何か月も放っておかれたのであれば、また対応を考えますけれども、とりあえずは現時点では早急に情報が来るものと期待しております」ということだが、この期待も甘すぎる。

 中川農林水産大臣記者会見概要(06.9.8)
 http://www.kanbou.maff.go.jp/kouhou/060908daijin.htm

 関連情報
  南部5州の広範な地域の米がGM汚染 米国最大の米販売業者が明かす,06.8.23
 米農務省 販売米を汚染した未承認GM米は安全 承認に向けたコメントを求める,06.9.9
  英国等3国の食品に未承認中国GM米 環境団体、即刻の世界的リコールと選別を要求,06.9.6