日本各地の蜜蜂がネオニコチノイド汚染の新研究 蜜蜂にどんな影響が?更なる研究を期待する
グループは岩手、福島、茨城、千葉、長野、静岡、鳥取、沖縄の各県と東京都内でサンプルを収集。28製品の蜂蜜、38地点のミツバチ、7地点のさなぎについて、クロチアニジン、ジノテフランなど6種のネオニコチノイド系農薬を分析した結果は、
・蜂蜜中の濃度は最高1グラム当たり351ナノグラム(ナノは10億分の1)、平均は約25ナノグラムだった。蜂蜜はネオニコチノイド系農薬の残留基準が定められていないが、その他の農薬に適用される国の暫定基準を18製品で超えていた。
・蜜蜂成虫で濃度が最も高かったのは養蜂バチの10.6ナノグラム。別の場所の野生ハチも最高9.4ナノグラムが検出され、汚染が全国的に広がっていた。
ということだ(蜂蜜やミツバチ、広がる農薬汚染 9都県で検出 日本経済新聞 17.8.29
ネオニコチノイドのミツバチ、またはハチ、さらには多くの食料作物生産が依存する授粉(送粉)昆虫・動物(ポリネーター)の健康に対する悪影響が指摘されて久しい。例えば一大養蜂地帯の南フランスでは、1990年代半ば以来、ミツバチの大量死が相次いだ。その元凶は、当時開発され・普及し始めたネタネやトウモロコシの種子被覆殺虫剤として使われるネオニコチノイド系のフィプロニルやイミダクロプリドではないかと疑われた。それはやがて、フランス、遅れてEUのハチが採餌のために花に集まる広範な作物(ナタネや秋播き穀物を除く穀物など)のネオニコチノイド種子処理の一時的禁止(モラトリアム)につながった(本HPの農薬・化学物質・有害物質参照)。
しかし、最近の研究は、ハチのネオニコチノイド暴露は働きバチの死亡率を高め、働きバチの衛生行動(巣房中の病気の子の排除)を減らし、女王蜂生産能力を低下させ、コロニーの越冬能力を減らす(冬季に崩壊するコロニーの増加) などのハチ(群)へのマイナス影響を確認した上に、ハチのネオニコチノイド暴露の主要経路は(今や何らかの規制を受けるようになった)種子処理を受けた作物ではなく、周辺植物の花粉であることを発見した。ハチはどんな植物の花粉からも採餌する。農場に今直接に施用されるネオニコチノイドよりも、以前に農業用に利用されたものが環境中に残存していて、植物体内、その溢液、汚染水中に出現したネオニコチノイドから大きな影響を受けていた。となると、作物や施用法を限定するネオニコチノイド部分禁止ではハチの保護に役立たない。まして
・北西ヨーロッパと北米では地方・地域レベルでポリネーターの数と多様性が減ってきた。その他の地域では野生ポリネーターのデータは欠落しているが、ローカルなレベルでの減少は記録されてきた。
・飼育されるセイヨウミツバチの数は過去50年間、一部ヨーロッパ諸国と北米は除き、世界的に増加してきた。しかし近年、少なくとも北半球の一部温帯地域と南アフリカでは、セイヨウミツバチのコロニーの冬季崩壊の例が急増している。
・授粉脊椎動物(鳥など)については、国際自然保護連合(IUCN)のアセスメントが、その16.5%は世界的に絶滅の恐れがあるとしている。昆虫ポリネーターについてはグローバルなレッドリストはないが、地域、国のアセスメントは一部のハチとチョウが絶滅の危機にあることを示している。
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