原発のあとは新エネルギー 東京五輪のために再び安住の地を奪われる福島県民

農業情報研究所環境エネルギーニュース:2016年9月29日

 政府が福島復興の柱のひとつに位置づける「水素社会構想」がいよいよ事業化に向け動き始めた。日本経済新聞によれば、安倍政府が「復興五輪」と位置づける東京五輪・パラリンピックの開催年である2020年までの稼働をめざし、東芝と東北電力、岩谷産業が数十億円を投じて福島県内に世界最大級の水素製造工場を建設する。工場は次世代自動車1万台分の燃料にあたる年900トンの水素を製造する。水素は工場に流す水の電気分解によって製造、分解に使う電力は工場周辺に設置する太陽光発電所や風力発電所などから作るという。

 世界最大級の水素工場 東芝・東北電など福島に 日本経済新聞 16.9.29

 これを聞いて空恐ろしくなった。この電力を仮にすべて太陽光発電で賄うとすれば、どれほどのメガソーラーを作らねばならないのか。水素1㎥、約0.09㎏を電気分解で作るには5∼6kwhの電力が必要という。年間900トンの水素を作るには、年間発電量5000万kwh以上が必要になる。

 ところで、28日に完成した福島・信夫山水梨太陽光発電所の出力は2.4メガワット、年間発電量は250万kwhほどだろう。とすると、山林を無残に切り開いたこんな発電所を20も作らねばならない。景観だけの問題ではない。この写真の遥か下方に見える町も、田も、畑も、大雨のたびに洪水、土砂災害の脅威にさらされる。しかも、流れ来る水や土砂は放射性物質をたっぷり含んでいる。折角除染した家も、田も、畑も元の木阿弥だ。原発で故郷を追われ、あるいは安住の地を失った多くの福島県民が、今度は新エネルギーによって安住の地を奪われる。すべて東京五輪・パラリンピックのためである。