米国 再生可能燃料基準引き上げ バイオ燃料業界一息も将来はトランプ次期大統領次第

農業情報研究所環境エネルギーニュース:2016年11月24日

 米国環境保護庁(USEPA)が11月23日、2017年に使用が義務付けられる再生可能燃料の量(再生可能燃料基準=RFS)を前年より6%増やして192億8000ガロンとすると発表した。

  EPA Finalizes Increase in Renewable Fuel Volumes,EPA,16.11.23 

 これは2007年エネルギー法が定めた242億ガロンを大きく下回る。それでも、車の燃費向上によるガソリン消費量の低迷とエンジン損傷を恐れての10%というガソリンへの混合率の上限(ブレンド・ウォール)から来る国内燃料エタノール消費の低迷で成長を阻まれてきたエタノール産業*にとっては久々の明るいニュースではある。

 再生可能燃料の大部分を占めるトウモロコシ・エタノールについては法律で定めれた上限の150億ガロンが認められた。2016年のRFSより5億ガロン多い。業界団体・再生可能燃料協会(RFA)は、「この動きは投資家を前向きにさせる」と歓迎している(This Thanksgiving, American Farmers and Consumers Can Thank EPA for Raising Final 2017 RVO )。

 バイオディーゼル、砂糖キビを原料とするエタノール、セルローズバイオ燃料など”先進的バイオ燃料”の基準も36億1000ガロンから42億8000ガロンに引き上げられた。ただ、これも2007年法の定める90億ガロンに比べると半分以下だ。バイオディーゼルは19億ガロンから20億ガロン、セルローズバイオ燃料は2億3000万ガロンから3億1100万ガロン(2007年法では5億5000万ガロン)への引き上げだ。バイオディーゼルの基準引き上げで、原料大豆油のシカゴ先物相場も早速跳ね上がった。

 これら先進的燃料の開発は期待されたように進んでいないが、EPAはなんとかその生産を増やそうと試みてきた。

 しかし、RFSをめぐるバイオ燃料業界にとっての久々の朗報も、トランプ大統領の誕生でたちまち暗転する恐れがある。石油業界はバイオ燃料使用の義務付けに一貫して反対してきた。EPAの発表を受け、石油企業の株価は一斉に下落した。アメリカ石油・天然ガス産業を代表するアメリカ石油研究所(API)は23日、EPAの今日の発表で、議会がRFSを廃止するか、抜本的に改革する必要性が一層高まった訴えた(API: Federal Ethanol Mandate Continues to be a Bad Deal for Consumers)。

 トランプ氏が気候変動お否定したり、化石燃料採掘のために一層の公有地開発を公言したりしてオバマ政府をあわてさせていることを考えると(Obama administration rushes to protect public lands before Trump takes office,The Guardian,16.11.24)、次期大統領が石油業界につくことも十分考えられる。かすかに見えたエタノール業界の光も、すぐに消えてしまう恐れがある。

 *バイオ燃料をめぐる国際動向:2013年 バイオマス白書2014 サイト版(本版)