農業情報研究所グローバリゼーション二国間関係・地域協力ニュース:2011年11月14日

TPP協定の大要発表 関税撤廃は例外なし

 「2011年11月12日、TPP参加9ヵ国の指導者が、参加国間の貿易と投資を強化し、革新・経済成長・開発を促進し、雇用の創出と維持を支援する野心的な21世紀のTPP協定の大要(broad outline)が仕上がったと発表した」。米国通商代表部(USTR)のウエブサイトに掲載されたこのアウトラインはこのように伝える。

 Outlines of the Trans-Pacific Partnership Agreement,USTR,11.11.12

 しかし、この文書では、各分野の交渉がどこまで進んでいるのか、各交渉分野においてどんなことが交渉され、何が合意され、何が合意に至っていないのか、こうしたことはまったく分からない。というのも、「法的文書」(協定条文)は、「ある分野ではほとんど完成している。他の分野では特定の問題に関する文書を仕上げるためには一層の仕事が必要である。これら文書は、違いが残るところを示すために括弧を含む」と言うが、このような文書自体は公表されておらず、見ることができないからである。

 この「アウトライン」の中の「法的文書」の項で知ることができるのは、交渉されている問題(分野)が「競争」、「協力と能力建設」、「クロスボーダーサービス」(国境をまたぐサービス)、「通関手続き」、「電子商取引」、「環境」、「金融サービス」、「政府調達」、「知的財産権」、「投資」、「労働」、「法的問題」、「物品に関す市場アクセス」、「原産地規則」、「衛生植物検疫措置(SPS)」、「技術的貿易障壁(TBT)」、「電気通信」、「仮参加(temporary entry)」、「繊維およびアパレル」、「貿易救済措置」の20の分野であることと、それぞれの分野におけ交渉進捗の「サマリー」だけである。そのサマリーとはいかなるものか。いくつかの例を挙げよう。

 「クロスボーダーサービス」について:「TPP諸国はクロスボーダーサービスの核心をなす要素の大部分で合意した。このコンセンサスは、電子的に、また中小企業により供給されるサービスを含め、サービス貿易のための公正で、開放的で、透明な市場を確保するための基盤を提供する一方、公益の名で規制する政府の権利を保護する」。

 環境について:「・・・・・・TPP諸国は、環境に関する条文が環境保護の強化を助ける貿易関連問題に関する有効な条項を含むべきであるという見方を共有し、実施を監視するための有効な制度的取り決めや能力建設の必要性に取り組むための特別の協力フレームワークを討議している。また、海洋漁業その他の自然保護の問題、生物多様性、侵入外来種、気候変動、環境財・サービスなどの新しい問題に関する提案も討議している」。

 知的財産権について:「TPP諸国は、TPP諸国間の知的財産権への有効でバランスの取れたアプローチを確保するために、知的財産権の貿易関連側面(TRIPs)に関する既存のWTO協定の権利と義務を強化し、発展させることに合意した。商標、地理的表示、著作権と関連権利、特許、企業機密、一定の規制された製品の承認のために必要なデータなど多くの形態の知的財産権や、知的財産権執行、ジェネリック資源、伝統的資源に関する提案が討議されている。TPP諸国は、TRIPsと公衆衛生に関するドーハ宣言に対して共有するコミットメントを条文に反映させることに合意した」。

 物品に関する市場アクセスについて:「TPP諸国は、それぞれがお互いに提供す市場アクセスが野心的で、バランスが取れ、透明であることを確保するすべてのTPP諸国の物品貿易に関連する原則と義務を確立することに合意した。物品貿易に関する法文は、パートナーの現在のWTOの義務を超えた約束を含むパートナー間の関税撤廃と、貿易障壁となり得る非関税措置の撤廃に取り組む。・・・・・・」

 衛生植物検疫措置(SPS)について:動植物の保健と食品安全性を強化し、TPP諸国間の貿易を円滑にするために、9ヵ国はWTOのSPS措置の適用に関する協定の下での既存の権利と義務を強化し、増築することに合意した。SPSに関する条文は、科学、透明性、地域化、協力、同等性に関する新たなコミットメントを含む。・・・・・・」。

 このように、わが国がTPP交渉に参加しようというとき、具体的に何が問題になるのか、この「アウトライン」からは何も見えてこない。

 それにもかかわらず、物品に関する市場アクセスに関する原則の例外となる品目があり得ないことだけは確かなようだ。

 この「アウトライン」の最後に記された「関税スケジュールとその他の市場開放パッケージ」は、サービスと投資についたは「各国が特別のサービス部門におけるコミットメントへの特別の例外を交渉することは許す」とし、政府調達についても「お互いにセンシティヴィティを認める」としているが、 「TPP関税スケジュールは、およそ1万1000のタリフラインを表すすべての物品をカバーする」と言うだけである。

 マレーシア政府もオーストラリア政府も日本の参加は歓迎するが、それで交渉進展が遅れるようなことがあってはならないと、はっきり釘をさしている。マレーシアは来年7月にはすべての交渉を終えねばならないと主張する。米だけは例外になど 、とてもと言い出せる雰囲気ではない。

 Leaders eye final Trans-Pacific deal in 2012,Reuters,11.12
 APEC leaders agree on trade deal outline,ABC,11.13