農業情報研究所グローバリゼーション二国間関係・地域協力ニュース;2013年2月23日

日米首脳会談 「聖域なき関税撤廃は前提ではないことを確認」の詭弁で日本のTPP交渉参加が決まり

 日米首脳会談が終わった。会談後の共同声明*は、

 「両国政府は、日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品のような、2国間貿易の重要品目が両国に存在することを認識し、最終的な結果は交渉中に決まるものものであることから、TPP交渉参加の条件として一方的に全ての関税撤廃をあらかじめ約束するよう求められるものではないことを確認する」

 ”Recognizing that both countries have bilateral trade sensitivities, such as certain agricultural products for Japan and certain manufactured products for the United States, the two Governments confirm that, as the final outcome will be determined during the negotiations, it is not required to make a prior commitment to unilaterally eliminate all tariffs upon joining the TPP negotiations.”

 と言う。

 ここに言う「TPP交渉参加の条件として一方的に全ての関税撤廃をあらかじめ約束するよう求められるものではないことを確認する」とい言辞を、安倍首相は会談後の記者会見で、「聖域なき関税撤廃は前提ではないことが明確になった」と言い換えた。

 これで、首相は、「『聖域なき関税撤廃』を前提にするかぎり、TPP交渉参加に反対」という自民党選挙公約の呪縛から解放された。日本のTPP交渉参加が事実上決まった。あとは正式参加表明の時期をうかがうだけだ。

 しかし、これは最初から分かっていたことだ。自民党は、米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖などの重要品目で関税撤廃の例外措置が勝ち取れるのかどうかという問題を、「聖域なき関税撤廃」が前提かどうかという問題にすり替えた。しかし、「全品目の関税撤廃の事前約束」=「聖域なき関税撤廃が前提」だというならば、関税交渉など最初から無用だ (交渉に参加した国は、参加する前に全品目の関税撤廃を約束しているのだから)。そんな前提などあるはずがない。だから、日米首脳会談は最初から決まっていたことを、強力な反対に直面する日本政府のために再確認したにすぎない。

 *Joint Statement by the United States and Japan,The White House,February 22, 2013

 しかし、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、メキシコ、ベトナムなど、多様な関心品目を持つ強大な農畜産物輸出国相手の交渉で、これら重要品目の例外措置を勝ち取ることができると見るのは全く非現実的だ。一品目だって難しいかもしれない。そうでなければ、これらの国がTPPに加わる意味がない。

 下手をすると、自民党も参院選で惨敗することになるかもしれない。ただし、他の政党がしっかりすればの話だが。