農業情報研究所グローバリゼーション貿易制限・紛争>ニュース:2018年6月20日

トランプが仕掛けた対中貿易戦争 米国中西部農民が名誉の戦死?

トランプ大統領が仕掛けた対中貿易戦争のエスカレートで米国中西部大豆農家が戦死に追い込まれようとしている。

中国は先週末、中国製品に25%の追加関税を課したトランプ政権への報復措置として米国製品に25%の追加関税を課すと発表した。この追加関税を課される品目には、米国が中国に輸出する農産物の中心品目をなす大豆が含まれる。最近作物年度、米国が中国に輸出した大豆は3620万トン、大豆輸出総量の61%、大豆総生産の31%を占める。

中国は輸入米国大豆に3%の関税と10%の付加価値税、計13%を課税してきた。それが一気に計38%に引き上げられる。中国の大豆輸入はブラジル産に切り替えられ、米国大豆の輸入は大幅の減るに違いない。

かくて、世界の価格をリードするシカゴ商品取引所の大豆先物相場は急落、19日には主産地中西部の高生産性農家も採算が取れないというブッシェル10ドルを大きく割り込む8ドル台に突入した。それに引きずられて穀物(トウモロコシ、小麦)も大きく下げた。大統領選挙でトランプ氏を支持した中西部農民「皆殺し」の様相だ(→農業情報研究所:小麦・トウモロコシ・大豆先物相場の推移)。

. 大豆生産者のロビーグループ・アメリカ大豆協会(ASA)は言う。

 「大豆価格は貿易紛争の直接的結果として下落している。価格は5月末以来ブッシェル1ドル半も下がり、なお下がり続けている。2018年作物年度、1ヵ月足らずの間に60憶ドル以上の損害だ」。「市場の安定と大豆生産者の生計を脅かさない非関税的解決策を望む」(Soy Growers in Middle of Tariff Feud with China Stand to Suffer Most,ASA,18.6.19)。

大豆生産者だけではない。全「産業界」も望むところだろう(「対中関税、米消費者の負担に」 産業界で反発広がる 日本経済新聞 18.6.16)。

トランプ政権に先はあるのだろうか。大丈夫、日本の安倍政権のような例もある。だが、「ほかの内閣より良さそうだから」とはいかないかもしれない。

関連ニュース

US-China trade spat takes toll on soyabeans and squeezes farmers,FT.com,18,6.20