中国、病害抵抗性GMイネの商業栽培開始は近いの報道

農業情報研究所(WAPIC)

05.3.14

 ロイターの報道によると、中国が、早ければ今年にも遺伝子組み換え(GM)イネの商業栽培を始める可能性がある。政府当局者は依然として口を固く閉ざしているが、中国の科学者たちは、中国政府がアフリカの野生イネから採られた胴枯れ病などの細菌病に抵抗性のある遺遺伝子・Xa21を組み込んだGMイネの大量生産を待望していると語っているという(China Close to Production of 'Safe' Genetic Rice  -  Reuters via Yahoo! News  (Mar 11, 2005))。

 科学者たちによると、政府はXa21がGMOの安全性への懐疑を払拭し、バイオテクノロジーの世界的リーダーになるというその目標に向かっての前進を助けると期待している。中国の多くの科学者は、この遺伝子が野生イネ由来であることから、環境と健康に比較的安全と考えている。北京の中国農業科学院教授のJia Shirongは、8年間の実験室の研究と野外実験を経て、安徽省でのXa21ハイブリッド・ジャポニカ種の商業生産開始を政府に申請したと語る。ロイターとの電話会見で、「フィールドの成績は立派なものだった。農民は収穫の損失と化学物質の使用を減らすことができる。研究データは、遺伝子改変ライスが伝統的ライスと同じほどに安全であることを示した」と語った。

 彼は、Xa21品種は、一部ロックフェラー財団の資金提供も受けた国際熱帯農業バイオテクノロジー研究所(ILTAB)の参加も含む国際協力を通じて作り出された。カリフォルニア大学のパメーラ・ロナルドは1995年、マリの野生土着種からXa21を発見、クローンした。彼女は、ILTABの助けを得て、この遺伝子を栽培種に組み込んだ。国際稲研究所の多くの科学者は、1997年以来、マリの野生イネについて研究、それが多様な細菌病に耐えることを発見してきた。

 とはいえ、Xa21には、なお未解決の問題もあるようだ。ある最新のエッセーによると、現在の研究は、クローンされたXa21遺伝子を導入されたイネは細菌病抵抗性を持つようになったことを示しているが、ロナルドとその同僚は、なお収量や食味をテストせねばならず、また当初の適応性が不変にとどまるかの確認に追われている。クローンXa21遺伝子は、東南アジアに分布するグラッシースタント・ウィルスやラギッドスタント・ウィルスに弱いのも問題という(The Super Rice Challengehttp://www.wowessays.com/dbase/af3/lva151.shtml)。

 中国の新品種はこれらの問題を解決したのだろうか。ロイターによると、中国グリーピースは、既に細菌病抵抗性品種はあるのだから、GM品種導入は「無用のリスク」を犯すものと言っている。また、中国で大量に栽培されている害虫抵抗性のGMワタについて、いくつかの地域では、非標的害虫の増加のために、農民は以前より多くの農薬が必要になったと言う研究者もいる。

 ただ、ロナルドは、Xa21の商品化は消費者にとっての大きな前進、このテクノロジーには多くの潜在力があると言う。GM作物については特許料支払いも農民経済の圧迫要因だが、Xa21の特許を持つロナルドの関係企業は、研究目的や低開発国での使用には特許料を請求しない、政府機関が農民に種子を配る中国では特許料徴収はなく、農民は自家採種して使うことになろうと言う。

 中国政府は本当にGMライス商業栽培を近々承認することになるのかどうかは未だ定かではないが、その可能性はもはや否定できないようだ。そうなれば、インドその他の途上国米生産国への影響は測りしれない。米国・カナダのGM小麦商業栽培への動きは頓挫しているが、GM種子により世界の農業・食料を根っこから制覇するというバイテク企業の野望は、一気に実現に近づくだろう。GMライスをめぐる中国の動きからは目が離せない。

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